研究実績の概要 |
国外における遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)に関する看護研究について57編の論文を対象にその動向を整理し論文として発表した(国外における遺伝性乳がん卵巣がん症候群に関する看護研究の動向,熊本大学医学部保健学科紀要,第17号,2021年3月発行)。HBOC診療プロセスにおけるさまざまな時期や段階、対象でその現象が明らかにされていた。うち10編は関連がん発症に関するリスクマネジメントにおける意思決定支援に関する論文であった。意思決定の様相として「BRCA遺伝子に病的バリアントがあると聞いた時の心理的な衝撃」、「自己のがん発症リスクの概念化に影響を及ぼす家族歴」、「遺伝学的検査後に受動的なリスクマネジメントを選択する傾向」、「リスクマネジメントの意思決定に影響を及ぼす要因」、「自己決定への責任の認識」、「医療提供体制への不満足感」、「ピアの力の活用」が明らかにされていた。日本国内でHBOCと診断された者の体験について明らかにした看護研究論文は1編しかない。国内においてHBOCの影響が及び得る様々な時期や段階において対象がどのような体験をしているのか明らかにし、それを基にした看護支援を検討していく必要性が示唆された。がん遺伝子パネル検査実施数の増加に伴い二次的所見としてHBOCと診断される者も増えること、またHBOC診療の一部に保険が適用されるようになったことから、BRCA1/2に病的バリアントがあり、関連がん未発症のプレバイバーの存在も増加してくることが推測される。プレバイバーが状況をどのように認識しているのか、どのようにリスクマネジメントをおこなっていくのかその様相を明らかにし、彼らの身体的・心理的・社会的QOLの向上を目指した看護支援を早急に検討していく必要がある。
|