研究課題/領域番号 |
19K10951
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研究機関 | 神奈川県立保健福祉大学 |
研究代表者 |
白水 真理子 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 教授 (60228939)
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研究分担者 |
安藤 里恵 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 講師 (50438090)
関根 聡子 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 講師 (30464522)
奥井 良子 駒沢女子大学, 看護学部, 准教授 (10554941)
中原 慎二 神奈川県立保健福祉大学, ヘルスイノベーション研究科, 教授 (40265658)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 2型糖尿病 / 治療中断 / 受診中断 / 糖尿病自己管理教育 / プログラム開発 |
研究実績の概要 |
看護職および2型糖尿病患者を対象とした2件の研究計画を企画し、研究倫理審査委員会の承認を得た。研究1は成人期にある2型糖尿病をもつ就労患者が受診中断を思いとどまった経験に関する面接調査、研究2は糖尿病療養指導の専門性を有する看護師が実施している受診中断予防のための援助に関するフォーカス・グループ・インタビュー(以下FGIと略す)を用いた集団面接調査である。研究2の面接調査を開始した。 糖尿病患者の受診中断に関する文献検討結果を第40回日本看護科学学会でオンライン発表した。PubMed,医中誌Webを用い、「糖尿病」「受診中断」をキーワードとし、計41件を分析の対象とした。受診中断や教育プログラムからの脱落に関する研究は、2000年以降増加していた。研究デザインは、統合的文献検討が1件,量的研究19件(そのうち実験的デザイン5件),質的研究9件であった。受診中断者は成人期の男性、労働時間が長い者に多く、不健康な生活習慣や世帯収入が低いことが関連していた。また、抑うつ性が高く、物事を悲観的に捉えやすいこと、治療満足度が低く、通院の負担感を感じていた。血糖コントロールは良好・不良共に受診中断と関連し、薬物療法の非適用者や、糖尿病合併症の出現・進行者に有意に多かった。米国のレビュー文献は、地域が提供する自己管理教育は人種的・民族的少数集団を対象とし、離脱者は交通手段、費用、スケジュールの葛藤等の障害を報告し、世帯収入が低い者、若者に非完了者が多いと述べている。また、介入として受診勧奨や個別指導、カウンセリングを用い、個人とグループのセッションの併用を推奨していた。日本の大規模臨床試験(J-DOIT2)において、受診促進や電話による療養指導、ITによる診療支援等により、63.3%の受診中断抑制効果がみられた。受診中断者への介入研究や中断予防のための介入研究は希少であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究1「成人期にある2型糖尿病をもつ就労患者が受診中断を思いとどまった経験に関する面接調査」は、総合病院やクリニックに研究依頼を行ったが対象者の確保に至らなかった。また、COVID-19による緊急事態宣言中は依頼そのものを控えた。 研究2「糖尿病療養指導の専門性を有する看護師が実施している受診中断予防のための援助に関するフォーカス・グループ・インタビュー」はリクルートを開始した。1回3から5名、総計30名程度の看護師を対象に6回のオンライン面接を計画している。現在4回分が終了している。分析途上の段階にあるが、エキスパートナースが捉えている治療中断のハイリスク者の特徴や予防的な関わり、同職種・多職種を巻き込んだ支援が明らかにされつつある。 タイ国のコンケーン大学との国際共同研究については、看護学部の教員と連絡をとり、2021年度中に、互いの国の糖尿病医療事情や治療中断対策を情報交換するオンラインカンファレンスを企画・実施することで合意した。
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今後の研究の推進方策 |
研究1の患者調査については、対象者のリクルート方法にインターネットリサーチ会社の活用を追加した。また、個別面接方法をオンライン面接に一本化した。研究計画変更に伴う、研究倫理審査を受け、承認後早急にリクルートを開始する予定である。 研究2の看護師対象の集団面接調査は、5月中に全調査を終え、早急に分析を進め、治療中断予防プログラムの原案作成に入る予定とする。FGIを用いた調査は、面接を開始すると、関心の高い看護職が多いことが分かり、日本糖尿病教育・看護学会の交流集会にエントリーした。採択されれば「働き盛りの患者さんの治療中断 どのように予防していますか」のテーマで、看護職と治療中断予防のために現在の職場でできること・できないこと/看護職同士がつながってできること/多職種とつながってできること/地域とつながってできることを、一部公開で話し合う予定である。また、FGI参加の看護職の中から、治療中断予防プログラムについて話し合う専門家会議への出席者を選出し、プログラム案の実現可能性等を検討する。 タイ国のコンケーン大学とのオンラインカンファランスの企画は、先方と開催概要や方法等を話し合い、2021年8月に開催予定とし、事前打ち合わせを行う。先方の看護教員の紹介で、クリニックの医師や大学院生(看護師)のプレゼンターが確保できる見込みである。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の状況下、臨床現場のひっ迫状況を受け、研究の受け入れが進まなかったこと、また研究倫理審査も厳しさを増したことにより2つの調査共に開始が遅れたことが主な要因である。またタイ国のコンケーン大学を通じた医療視察や、実態調査計画の企画も、COVID-19により渡航や交流が制限され話し合いが進まなかった。 今年度は2つの調査の対象者への謝金、テープ起こし費用、オンラインの通信機器や通信環境を確保できない対象者のための環境整備費用、ならびにインターネットリサーチ会社への謝金等に費用を支出する。また、学術集会での交流集会開催、プログラム試案への意見を募る専門家会議開催、オンライン国際カンファレンス開催や論文投稿のための翻訳や通訳の費用を支出する予定である。
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