研究課題/領域番号 |
19K10951
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研究機関 | 神奈川県立保健福祉大学 |
研究代表者 |
白水 真理子 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 教授 (60228939)
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研究分担者 |
安藤 里恵 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 講師 (50438090)
関根 聡子 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 講師 (30464522)
奥井 良子 駒沢女子大学, 看護学部, 准教授 (10554941)
中原 慎二 神奈川県立保健福祉大学, ヘルスイノベーション研究科, 教授 (40265658)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 2型糖尿病 / 治療中断 / 受診中断 / 糖尿病自己管理教育 / プログラム開発 |
研究実績の概要 |
糖尿病患者の受診中断に関するスコーピングレビューをまとめた。 糖尿病療養指導の専門性を有する看護師25名を対象に、受診中断予防のための援助や課題を明らかにする調査を実施した。フォーカス・グループ・インタビュー(以下FGI)をオンラインで実施し、S.ヴォーン(1999)によるFGI質的データ分析法により分析した。受診中断ハイリスク者の特徴は【受診行動に負担感をもつ人】【糖尿病に関する適切なヘルスリテラシーをもたない人】【療養に向かうパワーが弱まっている人】であった。受診中断予防の援助は【患者の背景や気持ちを知り支持的に関わる】【患者に合わせて指導に強弱をつけながら関わる】【最適な受診勧奨方法を模索する】【受診ストレスを軽減できる環境を作る】【保健・医療・福祉の専門職と協働し受診を継続・再開できる体制を作る】であり、『受診の障壁を低減するために多角的にアプローチする』をコアカテゴリとした。課題は【必要な人に支援が行き渡らない】【患者を支えるために必要な連携が難しい】【ハイリスク者の特定が難しい】【受診勧奨が難しい】であった。 看護師は、患者の雰囲気や言動から受診中断ハイリスク者を捉えていた。生活状況のみならず、self-stigmaの存在を考慮し、成人期にある患者が社会的役割と糖尿病のセルフケアのバランスを維持することの困難さに配慮した上で、ヘルスリテラシーを向上できるよう、関わりと支援の適期と内容を見極めていた。また、裁量の範囲内や糖尿病チームを活用してできる工夫を駆使して受診ストレスを軽減し、院内外の多職種と協働し、受診継続につなげていた。 タイのコンケン大学看護学部と両国の糖尿病の疫学的動向や、医療体制、糖尿病医療・看護について共通理解し、関連研究について情報交換する国際カンファランスを開催した。その後、ヘルスプロモーションをテーマに2回目を開催し、情報交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度COVID-19蔓延により、研究依頼そのものを控えていた患者を対象とした「成人期にある2型糖尿病をもつ就労患者が受診中断を思いとどまった経験に関する面接調査」は、オンライン調査に切り替え、9名の患者からのデータ収集を終えることができた。 コロナ禍で海外渡航が制限され、コンケン大学看護学部との共同研究の企画に関する話し合いや、その前段階の両国の医療・看護事情の視察等は実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
患者調査の分析を進め、看護師調査結果と比較検討しながら統合し、受診中断予防プログラムの開発につなげる。 また、看護師調査結果を日本糖尿病教育・看護学会の交流集会で共有し、調査結果の妥当性や、実現可能性、臨床現場での課題等を拾い上げる。 次に専門家会議を開催し、いつ、どの段階で、誰がどのように関わることが有用か、またどことつながって受診中断予防策を推進すべきかの検討案を提示し、意見を聞く。また受診中断ハイリスク者のタイプ別に、アプローチのポイントをまとめて提示するとともに、患者/一般市民に対して、受診中断予防を啓発するためのツール/広報媒体の制作を試みる。これらについて、現場適合性、実現可能性や内容・方法の妥当性等について意見を得て、プログラム案を洗練する。 また、タイのコンケン大学看護学部と今年度もオンラインカンファランスを開催する。2つの調査結果の概要や受診中断プログラム案を提示し、患者の文化的背景や医療制度・医療体制が異なる国際的な観点から、プログラムの有用性や活用可能性等について、見解を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
患者調査、看護師調査共に、過去2年間のコロナ禍でフィールドの開拓、データ収集の実施が阻害され、研究スケジュールの遅れを余儀なくされた。特に患者調査はその影響を強く被った。 今年度は調査結果が確定している看護師調査結果の公表(学会発表や論文投稿)のための学会参加費、旅費、投稿(登録)料、英文翻訳費用、またスコーピングレビューの公表にあたっての投稿料、英文翻訳費用、会議や研修会参加費や旅費等を支出予定である。 交流集会開催にあたり、学会参加費、旅費、ファシリテーターを務める糖尿病認定看護師等の謝金を支出する。専門家会議開催にあたり、旅費、謝金、会議費を支出する。研究成果を一般市民、特に糖尿病患者に啓蒙するための何らかのツールあるいは広報媒体の作成を検討し、デザイン料、校閲費、印刷費/製作費、郵送費等を支出する。
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