研究課題/領域番号 |
19K10958
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
岡田 佳詠 国際医療福祉大学, 成田看護学部, 教授 (60276201)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 認知行動療法 / 精神障害者 / 症状自己管理 / 看護師 / スーパービジョン |
研究実績の概要 |
本研究は、認知行動療法(以下、CBT)、すなわち認知・行動へのアプローチを通して問題解決を図る精神療法に着目し、スーパービジョン(以下、SV)体制のもとで看護師が実施する、急性期後の回復期にある精神障害者への症状自己管理のための短期CBTプログラムを作成、効果検証することが目的である。 2019年度は、短期CBTプログラムの作成・実施に必要な文献レビューを行った。看護師によるCBTの効果研究が蓄積された国外に焦点をあて、実践者に看護師を含む、精神疾患へのCBT効果研究を系統的質的レビューし、看護師のCBT実践の質の確保に焦点をあて検討した。MEDLINE, CINAHL, PsycINFO, Web of Scienceを用い、2005年1月から2015年9月の論文564件、そのうち選定・除外基準に合う24論文を抽出した。さらにうつ病・不安症対象の看護師のみがCBTを行った5論文に絞り、効果の概観と研究の質を検討した。結果、在宅高齢者へのうつ病発症の予防効果および介入前後のCBTの質の確保の有効性も示唆されたが、介入中の質の確保は十分記載がなかった。データ抽出過程やバイアスリスクの評価、看護師のCBT効果研究のさらなる検討に課題は残ったが、看護師が実施する短期CBTプログラムの作成・実施に不可欠な看護師への研修・SV体制に資する知見を得ることができた。 2020年度は、さらに看護師への研修・SV体制の構築に必要な知見を得るため、質的研究に取り組んだ。CBTを実施する看護師のスーパーバイザーに求められる態度・スキルについて明らかにすることを目的に、SVを受けたあるいは実施した看護師14名に対して40分程度のインタビューを実施し、グラウンデッドセオリーアプローチの手法を用いて分析を行っている。近日中に専門学会誌に投稿予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度に続き、看護師が実施する急性期後の回復期にある精神障害者への症状自己管理を目的とする短期CBTプログラムの作成・実施に不可欠な看護師への研修・SV体制に資する知見を、グラウンデッドセオリーアプローチの手法に基づく質的研究で得ることができた。しかし症状自己管理を目的とする短期CBTプログラムは作成途上である点が課題として残った。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、2019~2020年度の系統的質的レビューと質的研究に関する知見を踏まえ、国内外のSV実施体制に関する文献レビューおよび国内のSVの状況も検討し、看護師へのCBT研修・SV体制を構築する。また国内で入院患者の多い統合失調症や双極性障害に関する系統的レビューも行い、統合失調症、うつ病、双極性障害者を対象とする各症状自己管理を目的とする短期CBTプログラムを作成・実施し、効果検証に取り組む。効果検証の研究デザインは、量的・質的データを収集・分析し総合する混合研究法を用いる。量的データは、短期CBTプログラムの実施前・後、終了後1・3・6ヶ月の5時点で、症状や社会生活機能、QOLの程度等を測定し分析を行う。質的データは、プログラム終了後の1回、インタビューを実施し、逐語録の作成後、コード化、カテゴリー化し、カテゴリー間で比較検討し精錬する。これらの結果を総合してプログラムの効果を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は、世界的な新型コロナウィルス感染症の感染拡大の影響から、研究フィールドでの研究活動が困難で、かつ対面でのデータ収集にも制限がかかったこと、また国内外の専門学会の開催形式がWebに切り替わったことなどから、予定していた支出額に達しなかった。2021年度は、感染拡大状況を考慮しつつ、研究フィールドのさらなる拡大およびプログラムによる介入、データ収集・分析を進めること、また国内外の学会発表、論文作成をより一層進める予定である。
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