研究課題/領域番号 |
19K10958
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
岡田 佳詠 国際医療福祉大学, 成田看護学部, 教授 (60276201)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 認知行動療法 / 看護師 / スーパービジョン / 症状自己管理 / 教育研修 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、スーパービジョン(以下、SV)体制のもとで看護師が実施する、精神障害者への症状自己管理のための短期認知行動療法(以下、CBT)を効果検証することである。2019年度の系統的質的レビュー、2020年度の看護師のスーパーバイザーに求められる態度・スキルに関する質的研究を踏まえ、2021年度以降はCBTを実施する看護師へのグループスーパービジョン(以下、GSV)の効果検証に取り組んできた。 研究デザインはランダム化比較試験で、対象者は3年以上の経験のある精神科看護師であった。募集はWEB上で行い、研修開始前に研究依頼文書で説明し同意を得た。CBT教育研修は2日間の講義・演習と3日間のGSVの計5日間で構成され、2日目終了後にGSV群とフォローアップ群に無作為割付された。その後、GSV群には月1回計3回のGSV、フォローアップ群にはCBTの自己学習を設定し、GSV群の最終回と同日にフォローアップ研修を行った。データ収集は開始前と2日目、GSV最終回かフォローアップ研修後、終了1ヶ月後の4時点で、認知療法認識尺度(CTAS)、一般性セルフ・エフィカシー尺度(GSES)、問題解決行動自己評価尺度(PSSN)を測定した。また2日目と最終回に面接場面を設定し、認知療法尺度(CTRS)により評価した。統計解析は二元配置分散分析を実施した。結果、これまでに6クール実施し、対象者は35名であった。分析は4クールまでの24名、GSV群13名、フォローアップ群11名で実施した。精神科看護師経験年数は平均7.5年(SD=4.4)、開始前のCBT研修受講時間は平均16時間(SD=17.5)、開始前のCBT実施数は平均1.5件(SD=4.1)であった。分散分析の結果、CTAS、GSES、PSSN、CTRSのいずれも有意差はなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度は、2021年度に引き続き、CBTを実施する看護師へのグループスーパービジョンの効果検証を試みた。それと同時に、双極性障害患者への再発予防のための低強度短期集団認知行動療法プログラムの開発に関する研究計画を進めており、次年度に実施できる準備をしている。2022年度はコロナ禍の影響もあり、全体的にやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、①CBTを実施する看護師へのグループスーパービジョンの効果検証を継続することでデータを蓄積すること、②双極性障害患者への再発予防のための低強度短期集団認知行動療法プログラムを実施し効果検証することの2点を実施する。 ②のプログラムの実施は、これまでの看護師への教育研修・スーパービジョンに関する知見を活かし、質の担保された看護師によるものとする。本研究は、再発率が高く、長期に社会生活機能に障害をきたすにもかかわらず、CBT等の心理社会的治療が確立されていない双極性障害に焦点をあてていること、また昨今のCBTの動向として注目されている、短期で短時間、集団での実施を考慮したプログラムである点で有意義である。本研究の実施により、国内の双極性障害への再発予防効果が示されたCBTプログラムの一資料を提供でき、多数の双極性障害患者の回復や再発予防への貢献が期待される。 研究方法は、外来通院中の双極性障害患者を対象に、集団CBTのスーパーバイザーによるスーパービジョンを受けながら看護師が短期集団CBTプログラム(1クール計4回、1回60分)を実施し、主要評価として躁状態か抑うつ状態出現までの時間を測定し、副次的評価としてプログラム開始前・後での躁状態・抑うつ状態等の症状、QOLの改善程度等を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度はコロナ禍にあり、スーパービジョンを含めた看護師への教育研修はすべてオンライン形式で開催したことから、予定していた費用がかからなかった。それに加えて、学会への参加も十分できず、学会そのものもオンライン形式での開催で旅費等が発生しなかったことから、次年度使用額が生じた。本研究テーマを一年延長し、次年度は、看護師への教育研修に関する継続的なデータ収集・分析、成果の論文化、双極性障害患者への再発予防のための低強度短期集団認知行動療法プログラムの実施と効果検討を行い、国際学会での発表も計画している。
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