研究課題
2018年~2019年に本学附属4病院の診療記録から調査した入院時褥瘡保有患者の入院患者数の比率を記述するために、調査期間中の対象病院の登録病床数、新規入院延べ数を調査した。4病院12か月間の入院患者64,898人における入院時褥瘡保有者数は324人であり、新規入院褥瘡保有率は0.5%であった。68人(21%)が入院中に死亡しており、高度栄養不良や低い可動性などの特徴があった。40人(12%)が高齢者施設から入院していた。施設からの入院か否かを従属変数とした二項ロジスティック回帰分析の結果、「認知症症状」「褥瘡保有部位が仙骨部」が影響要因とし抽出された。また単変量解析では「高齢」「高度低栄養」「肺炎あり」「尿路感染症あり」「自力歩行なし」「ベッド上自力体位変換なし」「関節拘縮あり」が施設群に有意に多かった。27名が1か月以内にがん化学療法で治療をしていた。化学療法中の者は、それ以外の者よりも有意に年齢が若く、活動性と可動性が保たれていた。複数回の入院を除いて褥瘡発生要因の情報の欠損の少ない272人を本研究の分析対象とした。3つのクラスターが生成され、ユークリッド距離ならびに「属性と褥瘡要因」と「褥瘡と退院先」の比較による解釈可能性が確認できた。入院時褥瘡保有者は3つのクラスターに分類でき、その妥当性が検証された。“ADL保持群”では、ADLや認知機能が保たれ、患者本人のセルフケアや健康管理行動が期待できるのが特徴である。“低ADL群”では、セルフケアや自宅での介護が不十分となることで褥瘡が発生したタイプで、介護支援の導入時期であることが特徴である。深刻な褥瘡発生要因を持つ “超ハイリスク群”では、重い介護負担や終末期を見据えたケア提供体制構築が必要なことが特徴であった。
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日本褥瘡学会
巻: 24(4) ページ: 未定