研究課題
目的:発達性読み書き障害(読字障害)の病態解明のため、読字障害を有する小児と定型発達児において、音読および黙読時の左大脳半球の血流動態について近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)を用いて解析を行った。対象・方法:対象は、定型発達の小学1年生12名と読字障害を有する小学1年生10名である。全例、右利き。本研究を行うにあたり、被験者および保護者に対して研究目的と方法を説明して同意を得た。ETG-4000(日立メディコ製)を用い、左大脳半球に24チャンネルのNIRSプローブ(縦3×横6、間隔3cm)を一番下段の中心がT3になるよう装着した。 黙読および音読課題には、グリム童話の漢字かな交じり文(漢字総ルビ付き)を文字テキストとして使用した。結果:定型発達の小学1年生12名全例の結果を平均化すると、音読時・黙読時ともに、左前頭前野外側部(Broca野)および左下後側頭部にて酸素化ヘモグロビン(oxy-Hb)濃度の上昇を認めた。読字障害児においては、課題中、これらの部位のoxy-Hb濃度上昇が乏しく、読字障害児群におけるBroca野および左下後側頭部のoxy-Hb濃度は、定型発達児群と比較して、有意に低下していた(p<0.05)。それに対して、読字障害児群においては、左頭頂部でoxy-Hb濃度の有意な上昇を認めた(p<0.01)。結論:1年生の定型発達児は、chunkingが可能となっており、NIRS検査で左下後側頭部の活動が認められたのに対し、読字障害児においては、一文字ずつ対応する音に変換(decoding)しながらゆっくり読む逐次読みがみられ、decodingに関与する左頭頂部の脳活動が認められた。また、1年生の読字障害児においては、年長者の努力性の読みを裏づける代償的経路であるBroca野の活動が、まだ乏しかった。読字障害の評価にNIRSは有用であると考えられる。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (3件) (うちオープンアクセス 3件、 査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
Belitung Nursing Journal
巻: 9 ページ: 25-33
10.33546/bnj.2408
精神科
巻: 41 ページ: 126-132
子どもの心とからだ
巻: 31 ページ: 2-7