研究実績の概要 |
内因的な体内時計の周期と外環境の乖離が生殖機能の低下を引き起こすことは動物実験で示されているが、ヒトではまだ明らかでない。本研究の目的は、日本人に広く蔓延する睡眠負債・社会的ジェットラグと、女性ホルモン分泌動態との関連、月経症状や妊孕性などリプロダクティブヘルスへの影響を明らかにすることである。 本年度はまず女子学生150名(18.8 [SD: 0.71] 歳)を対象として横断調査を実施した。明治薬科大学研究倫理委員会の承認を受け、倫理的配慮の上、月経随伴症状日本語版(Moos 1968, Tanaka 2013)、月経周期、ピッツバーグ睡眠質問票(Buysse 1989, Doi 2000, Pilz 2018)、基礎情報等で構成した自記式調査を学内のシステムを用いて回答を求めた。 平日と休日の中央時間の差(社会的ジェットラグ: SJL)が1時間以上を示した学生の割合は78.0%であった。SJL1時間以上の群では、1時間未満の群に比べて、月経随伴症状総得点が有意に悪く(p=0.025)、下位項目では月経時の痛み、行動の変化、水分貯留に有意な差がみられた(それぞれp<0.05)。月経周期は、SJL1時間以上の群では32.2 [5.4] 日、SJL1時間未満の群では31.2 [5.5] 日で、両群間に有意な差は認められなかった(p=0.43)。ロジスティック回帰分析の結果、睡眠時間や夜型クロノタイプと独立して、SJLは重症月経随伴症状の関連要因であった。 社会的ジェットラグは月経随伴症状の重症化と関連することが示唆された。交代制勤務ほど大幅な概日リズムのずれでなくとも、週末ごとの数時間の睡眠時間帯の乱れが女性の生殖機能に影響する可能性がある。
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