研究実績の概要 |
睡眠のタイミングは概日リズムの重要な指標である。COVID-19による社会規制により、日本では通勤時間や睡眠時間が大きく変化したが、これらの変化には地域差があることが推測された。そこで本年度は、社会的時間圧力の変化による睡眠パターン、特にクロノタイプと社会的ジェットラグ(SJL)への影響が地域によって異なっていたか否かを明らかにすることを目的として検討を行った。 Global Chrono Corona Survey(GCCS, 国際新型コロナ時間調査)で収集した日本のデータを解析に利用した。郵便番号の情報から、居住地域を首都圏(n=395)と地方圏(n=334)に分類し、2群の比較を行った。また社会規制中の社会的ジェットラグ低減の関連変数を検討するため、重回帰分析を行った。 在宅勤務の割合は、社会規制前は首都圏と地方圏で有意差はなかったが(首都圏: 16% vs 地方圏: 15%)、社会規制中は首都圏の方が地方圏に比べて有意に高かった(首都圏: 69% vs 地方圏: 51%)。平日の目覚まし時計使用者の割合は、社会規制前は両地域で有意差はなかったが、社会規制中は首都圏の方が地方圏に比べて有意に低かった(p=0.018)。 社会的ジェットラグは、社会規制前は両地域で差がなかったが、社会規制中は首都圏の方が地方圏に比べて有意に大きかった。社会的ジェットラグの低減には、首都圏、在宅勤務、勤務日における目覚まし時計の非使用、クロノタイプ(社会規制中のMSFsc: 睡眠負債調整後の休日睡眠中央時刻, MSFsc)が有意に関連していた。 本研究の結果は、在宅勤務の頻度の増加や目覚まし時計の使用頻度の減少に反映されるような社会的時間圧力の緩和、社会規制中の朝型化が、社会的ジェットラグ低減と関連し、こうした傾向は首都圏で顕著であることを示唆していた。
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