研究課題/領域番号 |
19K11005
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
薬師神 裕子 愛媛大学, 医学系研究科, 教授 (10335903)
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研究分担者 |
野本 美佳 愛媛大学, 医学系研究科, 助教 (90830901)
濱田 淳平 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (80637900)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | フラッシュグルコースモニタリングシステム / 小児1型糖尿病 / 低血糖 / 血糖コントロール / セルフケア |
研究実績の概要 |
1.研究目的:①フラッシュグルコースモニタリングシステム(FGM:FreeStyleリブレ)の活用が、小児糖尿病患者の血糖変動の理解を促進し、低血糖の認知や予防と糖尿病セルフケア能力への効果を明らかにする。
2.実施内容:小児1型糖尿病患者のFGMシステムの利便性と課題と低血糖の頻度や対応を測定する尺度を海外文献より検討した。その後、2019年8月に4泊5日で実施した小児糖尿病サマーキャンプの参加者21名(小1-高3)を対象に、FGMシステムを5日間活用した介入を行った。糖尿病キャンプ中に1日7回の血糖測定(SMBG値)と同時にFGMシステムを用いたグルーコース値のスキャンを行い、インスリン注射量、食事量、運動量によるSMBG値及びグルコース値への関連を自己評価した。介入前、介入直後、介入1ヶ月後に、低血糖の頻度、HbA1c値、改訂版糖尿病セルフケア尺度、FGM活用の評価について、質問紙による回答を得た。
3.結果:糖尿病キャンプ参加者21名のうち,全ての質問紙の回答が得られた16名のグルコース値とSMBG値の相違をt-検定により分析した。さらに、グルコース値とSMBG値の相違を示す平均絶対的相対的差異(MARD)を算出した。糖尿病キャンプに参加した16名の5日間の合計測定回数は421回であり、平均SMBG値125.3mg/dl、平均グルコース値132.5 mg/dlと有意差を認めたが、MARDは12.7%とFreeStyleリブレシステムが示す11.4%に近い値が得られた。また、血糖値とグルコース値の相関は、r=0.964と有意な正の強い相関が見られ、グルコース値はSMBG値と近似値を示した。セルフケア尺度の総得点は、介入前96.0点、介入直後101.5点と有意な上昇を認めた(χ2=13.7, p=0.001)。下位尺度得点では、「F2:間食・外食とインスリン注射」の得点が介入前10.5点、介入直後14.0点と有意な上昇を認めた(χ2=22.1, p=0.000)。FGMは小児の血糖値変動の予測やインスリン注射に関連したセルフケア得点の上昇に有効であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、小児1型糖尿病患者のFGMシステムの利便性と課題と低血糖の頻度や対応を測定する尺度について、海外文献を用いた検討にとどまらず、小児糖尿病サマーキャンプ中に、FGMシステムを小児1型糖尿病患者に実際に使ってもらい、FGMシステムの短期効果を測定した。
今年度の実施は、コントロール群をおかない介入研究であったが、5日間のFGMシステムの活用による短期効果が明らかになった。特に、グルコース値とSMBG値の相違を示す平均絶対的相対的差異(MARD)は12.7%と、小児1型糖尿病患者においても、FGMシステムが血糖値の把握において、活用可能であることが示された。指先穿刺の必要性があるSMBGよりも痛みがなく簡便であること、測定器にグルコース値のグラフが示されることで、子どもの血糖値の変化を予測でき、糖尿病セルフケアに最も重要なインスリンの調節が行えるなど、小児1型糖尿病患者にとって効果的なシステムであることが明らかになった。
今後、FGMシステムを長期的な効果について研究を継続していく予定であるが、新型コロナウイルスの感染拡大防止により、2020年8月に予定されていた小児糖尿病サマーキャンプの実施が中止となり、介入研究が難しい状況となっている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、FGMシステムを長期的な効果について研究を継続していく予定であるが、新型コロナウイルスの感染拡大防止により、2020年8月に予定されていた小児糖尿病サマーキャンプが中止となり、介入研究の実施が難しい状況となっている。したがって、2020年は2019年に実施した研究結果のさらなる分析を行い、FGMシステム活用の個人の効果や発達段階ごとの特徴などについても分析を進めていく予定である。特に、FGMシステムを活用したことで、低血糖の頻度や対応についてどのような効果があったのかを明らかにする。そして、小児1型糖尿病患者へのFGMシステムの短期効果について、論文執筆を行う予定である。
FGMシステムの長期的効果を測定する介入は、2021年に予定されている小児糖尿病サマーキャンプでの実施に変更する。 長期的な介入を実施するまでに、介入マニュアルの作成、低血糖の頻度や対応などを測定する質問紙の信頼性と妥当性の再検討など、FGMシステムを用いた研究の文献検討などを丁寧に進め、今後の介入研究がスムーズに実施できる準備を進めていく。
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