本研究は、既存の発達障害児向けの支援プログラムのエビデンス及び効果を検討するとともに、保育者の「気になる子ども」への対応の現状および課題について明らかにすることを目的としている。 1年目に実施した文献検討では、十分なエビデンスが示されている研究は見当たらなかった。保育現場での実践に関する研究結果において「気になる子ども」の行動面への対応に苦慮している点に注目した。また国外文献において、アーリー・スタート・デンバーモデルが、自閉スペクトラム症児の適応行動に向けた支援として効果が得らえていることに注目した。2~4年目には、文献検討の結果およびアーリー・スタート・デンバーモデルの9つの発達領域を柱として、保育士を対象としたインタビュー調査の質問項目を抽出し、インタビューガイドを作成した。それをもとに保育施設に勤務する保育士9名を対象としてインタビュー調査を実施した。研究対象者が語った「気になる子ども」が示す行動への対応について発達領域に分類し、分析を行った。その結果、「行動」に対する内容が最多であり、「認知スキル」と「遊びスキル」が最少であった。「社会的スキル」と「表出コミュニケーション」は実践されていたものの、「模倣」「共同注視」への対応が少ないことから、「気になる子ども」の周囲への関心を示す行動の少なさや視線が合わない様子があることに対する保育士の認識は高くないことが示された。アーリー・スタート・デンバーモデルの考え方に基づき、できていることに注目して伸ばすことにより、相対的に他の発達領域も伸ばす支援方法を取り入れる必要性が示唆された。 令和5年度は、分析結果を学会で発表した。今後は、これらの結果を踏まえ、保育士によいる「気になる子ども」の周囲への認知や社会的スキルの発達領域を促進できるような支援方法について検討を進めたい。
|