研究実績の概要 |
本研究の目的は、妊娠糖尿病既往女性(GDM既往女性)を対象に、将来の糖尿病発症予防に向けた産後1年間の産後包括的プログラム(栄養・運動・母乳哺育)を確立することである。さらに健康関心、ヘルスリテラシーの向上へのアプローチを基盤とした包括的プログラムが重要である。まず、GDM既往女性の母乳哺育は、女性自身の将来の2型糖尿病発症予防があるかどうかを明らかにした。4~12週の授乳期間がそれ未満の授乳期間と比較して、産後の2型糖尿病発症を低下させていた。また産後6ヵ月以上の完全母乳あるいは80%以上の母乳により産後1年の耐糖能異常が減少していたことをレビューで確認し、産後6ヵ月以上の母乳哺育の継続を入れた。身体活動には運動やスポーツだけではなく、労働や家事、余暇活動など、日常生活におけるすべての活動が含まれ、エネルギー消費量を増加させれば生活習慣病の予防や改善に効果がある。乳児を抱えながらの運動は、単に歩数増加の指導のみでは遂行できないのが現状である。運動については児とともにストレッチや、ウォーキングを行い1日8,000歩を目標に促した。食事は妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針2021に則り、体重管理として適正体重を維持してBMIや体重の増加を予防した。母子健康手帳用にプログラムを記載したGDMの産後フォローアップ(産後1~3か月後に糖代謝を検査しましょう)の啓蒙シール、フォローアップの重要性について動画を作成した。フォローアップ体制があっても産後糖代謝異常を引き起こす症例があり、行動変容に関する科学的プロセスに着眼し、かつ強く関連する既往女性の行動変容に影響を与える因子を検証することの必要性が得られた。GDM既往女性の産後の耐糖能異常は、栄養・運動・母乳哺育だけではなく、健康関心、ヘルスリテラシー、自己肯定感にどのような傾向があるのか明らかにしている。
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