研究課題/領域番号 |
19K11023
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研究機関 | 甲南女子大学 |
研究代表者 |
田中 雅美 甲南女子大学, 看護リハビリテーション学部, 助教 (60835776)
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研究分担者 |
村上 靖彦 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (30328679)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 重症心身障害児 / 代理意思決定 / 現象学的アプローチ / 母親支援 / 最善の利益 |
研究実績の概要 |
新生児医療の急速な発展は,救命率を上昇させると同時に生存の限界といわれる子どもたちへの医療選択において,医療者や親たちに倫理的ジレンマを生じさせている(Ruthford,Ruthford&Hudak,2017).原因の一つは,子どもに治療への意思確認が行えないことにある.もう一つは,治療選択の効果と身体への侵襲との兼ね合いを見極めることは難しく,何が子どもにとっての最善の利益なのか,どれだけの研究蓄積をもったとしても十全な答えを出すことが出来ていないことにある(Fanaroff et al .,2014;Bucher et al.,2018). こういった答えのない問いに立ち向かってきた親たちの葛藤を聞くことの必要性は,その語りから改めて実感することができた. ある遺伝子疾患のある子どもを育てる母親は,医師に宣告された余命をいつも意識しながら日々を支える.当たり前の日常に「いつ死ぬのか」わからないことへのやるせなさを語った.また別の母親は命を守れたことと,その選択を子どもが良しとしているのかわからないこと,「生かすこと」,「生きること」の狭間で共に生きる葛藤を語った. 母親たちの「語り」はー当たり前のことだがーいままでの母親とも違うと同時に,驚くほど一人ひとり全く違う.この「語り」は語られるがままに支援者にとどける必要がある.それほどまでに厚みのある,支援者の前提を大きく変えることができる語りであった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は,コロナ感染の影響から全く臨床に行くことはできなかった.ただし,一方で会えないことから会えないからこそつながることを積極的に模索,実践できた一年であった.とくにSNSを用いた対話は,自由に外出することが難しい親と子どもたちをつなぐことができるツールとして,今後の実践にも活用できると実感した.以上のことから「おおむね順調に進展している」とした.
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今後の研究の推進方策 |
対面でのインタビューは今年度も非常に難しいと言わざるを得ない.そのため対面でのインタビューデータの収集は行わない. 代わりとして,①昨年度までに集めたインタビューデータやSNSでの発言を分析し,論文化していく.②立ち上げた「めでぃっこ親の会」でのSNS等の運用方法の検討をし新な支援方法の検討へとつなげる.③当初の目的であった国際学会の発表では,オンライン化が進んでいることから,移動費が削減できることが考えられる.それを学会誌への発表へと運用していくことを検討する. ①~③を今年度行うことによって,本研究の成果を多くの媒体に発表できること,当初の研究目的から一歩進んだ継続的支援方法の検討,以上の二点が行える.
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度には研究フィールド参加をすることができなかったため,予定していた旅費を使用することができなかった.今年度は成果発表のための使用とSNS使用において研究費を使用する予定である.
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