産後ケアを包括し、3つのS、すなわち分娩に関わる女性やその家族、助産師の「Smile笑顔、Safety安全、Satisfaction満足」を実現できる、科学的エビデンスに基づく未来志向の新しい院内助産システムの構築を目的に研究を遂行した。 研究計画通りに、はじめの2年間運用した院内助産システムについて、その改訂案を3年目のはじめに策定し、この改訂システムに沿って、2年間院内助産を前向きに運用した。その結果、2年間(令和3・4年度)の院内助産数は計191例であった。この間、分娩停止や胎児機能不全などの医学的適応により医師による帝王切開が施行された症例は2例のみだった。全例において、母児に大きな分娩合併症はなく、策定した改訂システムの「Safety安全」は担保できていると考えられた。患者女性・ 家族からの評価も、これまでと同様に良好であり「Smile笑顔」と「Satisfaction満足」が得られていた。 また、院内助産をとりまく現在の国内状況を知るために、全国対象のアンケート調査研究を行っ た。その結果、院内助産実施施設の割合(20.9→29.7%)、「院内助産は地域の産科医療提供体制の一部として有用で、積極的に取り入れるべきである」と回答した施設の割合(41.9→48.6%)は、ともに2017年の我々の調査結果より増加していた。我が国の地域産科医療における、院内助産の重要性がさらに認識されてきていることが明らかとなった。加えて、最終年度にかけて産後2週間健診を受診する褥婦の傾向とそうした褥婦への助産ケアについて研究を行い、産後2週間健診が育児不安を抱える褥婦の支援の場となることを明らかにした。 これらの研究から、産後ケアを包括し3つのSを実現するエビデンスに基づく未来志向院内助産システムの基礎を構築することができた。現在、本研究成果をまとめた論文発表の準備中である。
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