研究課題/領域番号 |
19K11028
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
勝又 里織 東京医科歯科大学, 大学院保健衛生学研究科, 非常勤講師 (00514845)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 人工妊娠中絶術 / 妊娠初期 / 看護師 / 看護ケア / 実践知 |
研究実績の概要 |
本研究は、妊娠初期の人工妊娠中絶術(以下中絶とする)における日常の看護を明らかにすることを目的としている。具体的には、2010年から2013年に実施した中絶に関わる助産師や看護師へのインタビューを参考に質問紙を作成し、全国の中絶を行う施設の中から無作為に抽出した施設で勤務する看護師および助産師に調査を依頼する。 初年度である本年は、主に質問紙を作成し、予備調査及び本調査の準備をすることであった。質問紙を作成するにあたり、キーとなる「関わらない看護」について、これまで関わることが前提となっている看護の中で、「関わらない」ことがどういうことなのか、逆に中絶の看護において「関わる」ことはどういうことなのか等、言葉に含まれる意味であり、内容を明確にする必要があった。このため、看護系大学および大学院生への講義や研究発表会等の場を通し、研究について話題にする中で、学生や母性看護学領域の専門家から広く意見を求めた。特に、大学院生からは産科に関わらず臨床経験がある場合も多く、大変貴重な意見を得ることができた。現在、得られた意見を参考に、質問紙の内容について吟味しているところである。 質問紙を作成すると同時に、日本の性の実態や学校における性教育のあり方、ならびに医療者の支援のあり方等に関する情報収集のために、講演や研修会に参加した。中絶においては、単に知識不足に伴う妊娠に限らず、近親相姦やドメスティック・バイオレンス、発達障害、強姦など、複雑な背景や犯罪が潜んていることも少なくないことが、先行研究よりすでに明らかになっている。そのような「関わらない」の裏側にある「関わる」ことの必要性についても、再度検討する機会を得ることが出来た。これにより、質問紙を作成する上で、非常に多くの参考となる情報が得られたと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
講義や研究会の場を通して、これまで関わることが前提となっている看護において、「関わらない看護」が看護として成立しうることについて、専門家の間でコンセンサスを得ることの難しさが明らかになった。このため、質的に明らかにした「関わらない看護」について、質問項目に挙げるにあたり、予定以上に多くの検討の時間を要することとなった。 加えて、2020年1月に発生した新型コロナウイルスの影響により、活動自粛を余儀なくされて、当初予定されていた学会の中止や意見交換の場を失うこととなった。こうした影響は、研究者間だけでなく、最も必要だった実際に中絶の看護を行う看護師からの意見を伺う機会を制限することにもつながった。特に、1月以降の講義や実習が終わり、研究に専念する時間が増える時期だったこともあり、元々遅れていた研究の挽回することが困難であった。
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今後の研究の推進方策 |
オンライン会議等の場を通して、研究者間の意見交換を実施し、質問紙の完成に努めるとともに、医療現場の状況を見ながら、予備調査の機会を得る。予備調査の結果を踏まえ、質問紙の内容をさらに整理して、本調査の実施を目指す。 また、医療機関が落ち着かなければ、研究への協力は得にくい。新型コロナウイルス感染と医療機関の状況を見ながら、具体的な実施時期は再度検討する必要がある。 さらに、2021年度に予定していた英国SANDSの研修等、海外での活動については、渡航制限の緩和等状況を見ながら、2022年度に延期する等、検討するものとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度、実施に至らなかった予備調査および本調査を実施するにあたり、アンケート作成のための印刷代ならびに郵送代金が必要である。 また、それらの準備や分析にあたり、協力いただける方への謝金が発生するため、その費用が必要となる。 さらに、1から3月までの間に参加を予定していた学会や研修会の急な延期・中止分については、開催が決定した際には参加をするため、その費用として残しておく必要がある。
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