研究課題/領域番号 |
19K11029
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
波崎 由美子 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (80377449)
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研究分担者 |
上澤 悦子 京都橘大学, 看護学部, 教授 (10317068)
内江 希 福井大学, 学術研究院医学系部門, 助教 (10782683)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | AYA世代女性がん患者 / 妊孕性意思決定 / パートナーシップ看護支援モデル |
研究実績の概要 |
ヒアリングにより、がん領域と生殖領域の認定看護師・専門看護師の妊孕性意思決定支援の現状と課題についての自由記載内容をそれぞれ質的記述的に分析した。 生殖領域の看護師は、妊孕性温存治療よりも患者の生命(がん治療)を優先しつつ、妊孕性温存治療は、未来につながる治療という思いで患者の意思を第1に尊重し、納得した決定を支援しようとしていた。また、患者の優先順位、考え、パートナー、家族の考えを確認、尊重し、妊孕性に関する必要かつ正確、具体的な情報を提供し一緒に考えるという姿勢を大切にしていた。一方で、妊孕性温存治療について過大な期待をもたせないことも大切にし、一般的な妊娠可能年齢に加えて、各施設における不妊治療成績の現状を伝えていた。生殖医療機関を受診する段階で、がん治療中の患者さんの受診が多いため、身体的負担の観察とアセスメントも行っていた。妊孕性意思決定支援の課題として、限られた時間の中で、不妊の可能性や妊孕性温存治療について正しく理解してもらうことの難しさ、パートナー、家族と妊孕性保持に関して意見の相違がある場合、どうしていいか困るがあがった。現在、がん領域の看護師の妊孕性意思決定支援状況と課題についても同様に分析中である。 また、妊孕性温存、AYA世代、女性がん患者等のキーワードで国内外の文献レビューを行い、看護モデル案の参考となる文献を23件選出した。 今後は、上記分析結果をもとに、生殖領域とがん領域それぞれの看護師の意思決定支援内容、役割、課題を全体的、具体的に整理し、妊孕性温存意思決定のステップに沿い、生殖領域とがん領域双方の妊孕性意思決定支援内容を検討し、看護モデル案を作成する。そして、患者を中心とした看護師、医師を含めた医療者の役割、医療者間の詳細な実践状況を参加観察により明らかにして、パートナーシップ看護支援モデルを修正する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
文献レビュー、ヒアリングによる生殖領域の認定看護師・専門看護師の妊孕性意思決定支援の現状と課題についての分析は終了しているが、がん領域の認定・専門看護師の分析がまだ終わっておらず、看護支援モデル(案)にまで至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
予備調査の実施と対象施設、対象者の選定を実施する。がん領域と生殖領域の専門看護師および認定看護師各2~3名程度を対象に、概念と妊孕性温存意思決定のステップと妊孕性温存意思決定パートナーシップ看護支援モデルを参考に、妊孕性温存に関する情報提供や意思決定支援の現状(役割、支援内容と連携)についてヒアリングを実施し、インタビューガイドを作成する。フィールドを調整し、調査に協力していただける対象施設と対象者を選定する。 次に、本調査を実施する。AYA世代女性がん患者の妊孕性温存に関して、がん領域と生殖領域の看護師たちがどのように情報提供と意思決定を支援しているのか、患者を中心とした医療者間の連携を含めた実践状況と課題を明らかにし、パートナーシップ看護支援モデル(案)を検討・修正する。 具体的に、がん領域および生殖領域での認定看護師または専門看護師のなかで、実際に妊孕性温存に関する意思決定支援に携わっている看護師各領域10名程度にインタビューを実施する。調査内容と方法としては、支援の実践状況をありのまま明らかにするため、妊孕性温存に関する情報提供とその選択肢から意思決定をするまでの実際の場面をがん領域および生殖領域の両方で観察する。看護師がどのように情報提供に関わり、どのように意思決定を支援しているのか、看護師とAYA世代女性がん患者のかかわり、および医師や他職種と患者家族を含めたかかわりの場面を観察し、その後、参加観察で見聞きした場面を会話の糸口とし、面接予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
がん領域の看護師のヒアリングが実施できておらず、旅費の支出がなかったことが大きい。 2020年度、対象10施設のがん領域および生殖領域の専門看護師、認定看護師、医師等に本調査を実施する予定であり、その際の旅費、人件費、謝金として使用する予定である。
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