研究課題/領域番号 |
19K11029
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
波崎 由美子 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (80377449)
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研究分担者 |
上澤 悦子 京都橘大学, 看護学部, 教授 (10317068)
内江 希 福井大学, 学術研究院医学系部門, 助教 (10782683)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | AYA世代女性がん患者 / 妊孕性意思決定 / がん・生殖 / パートナーシップ / 看護支援 |
研究実績の概要 |
令和2年度は、がん治療前の意思決定パートナーシップ看護支援モデル案の方向性、看護支援方法を検討するために文献検討を実施した。まず、AYA世代で研究が最も多い若年乳がん患者に対する妊孕性意思決定に関する研究の動向を概観し、若年乳がん患者への妊孕性保持に対する情報提供、意思決定支援の内容・方法について分析し、支援に関する国内外の文献を分析した。 医学中央雑誌Web版、CiNii Articles、PubMed、CINAHL with Full Textを用いて、データベース検索を行なった。期間は、わが国で「がん・生殖医療」という言葉が使用されはじめた2010年頃(鈴木, 2015)から2019年までとし、国内論文11件、海外文献10件、計21件を抽出した。 国内では、若年乳がん女性当事者への意思決定に関する研究は認められなかった。各1施設の報告であるが、若年乳がん患者への妊孕性温存に関する情報提供割合は、2019年までに年々増加の傾向にあった。また、妊孕性温存治療を受けた若年乳がん患者277名の妊孕性温存治療、妊娠・出産状況、がん再発状況が後方視的に報告されていた。さらに、妊孕性保持に関する情報提供時には、がん治療、妊孕性温存のみならず、遺伝性乳がんリスク評価も実施する視点の重要性に関する症例報告があった。看護支援4件に関しては、看護職者に対する乳がん患者の妊娠・出産支援の啓発リーフレット試作版の作成に関するもの、がんと生殖領域の看護職者の妊孕性温存意思決定支援の実態と課題、及び支援の困難性が明らかとなった。医療者の知識や関心を高め、がん・生殖医療への啓発を測る必要性が述べられていた。 海外では、意思決定支援教材開発、教材の比較と評価、開発した教材の有効性について評価した研究があった。これらの結果は、看護モデル案作成に活用した。また、現在、文献レビューとして論文作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
AYA世代女性がん患者の妊孕性温存に関して、がん領域と生殖領域の看護師たちがどのように情報提供と意思決定を支援しているのか、患者を中心とした医療者間の連携の実践状況と課題について、参加観察により支援状況をありのまま明らかにしようと考えていたが、コロナ過でデータ収集ができていない。
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今後の研究の推進方策 |
AYA世代女性がん患者のうち、子宮頸部がん患者の妊孕性温存ニーズ、意思決定、および意思決定支援に関する国内外の文献レビューを実施し、それをもとに、妊孕性温存意思決定支援看護モデル案を作成する。そして、がん領域と生殖領域の看護師にヒアリングを行い、モデル案を修正する。 次に、AYA世代女性がん患者の妊孕性温存に関して、がん領域と生殖領域の看護師たちがどのように情報提供と意思決定を支援しているのか、患者を中心とした医療者間の連携、実践状況と課題を明らかにし、パートナーシップ看護支援モデルを検討・修正する。 がん領域および生殖領域の認定または専門看護師で、実際に妊孕性温存に関する意思決定支援に携わっている看護師各領域10名を対象として、参加観察により、妊孕性温存に関する情報提供とその選択肢から意思決定をするまでの実際の場面を両方の領域で観察する。看護師がどのように情報提供に関わり、どのように意思決定を支援しているのか、また、看護師とAYA世代女性がん患者のかかわり、医師や他職種と患者家族を含めたかかわりの場面を観察し、その中で見聞きした場面を会話の糸口とし、インタビューガイドを用いて30~60分程度の個別面接を行なう。看護師の支援は、AYA世代女性がん患者や他の医療者との相互作用により、思いや考えのもと行動や言動が生じることから、グラウンデット・セオリー・アプローチに準じて質的帰納的分析を行う予定としている。 これらの結果をもとに、モデル案を創成し、看護師とAYA世代女性がん患者より意見をもらい、洗練させ、検証に向けて準備する。 新型コロナウイルス感染拡大のために参加観察ができない場合、デルファイ法により、看護師とAYA世代女性がん患者、医師等より意見をもらい洗練させ、検証に向けて準備する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度、コロナ過でデータが収集できなかったこと、学会への参加もオンラインでの参加となったことから、旅費を使用しなかったため、次年度使用が生じた。次年度、データ収集が可能であれば、旅費として使用予定である。また、学会発表の旅費として計上する。 創成した妊孕性意思決定パートナーシップ看護支援モデルは、ホームページ上で公表するとともに、冊子として活用できるようにする予定である。
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