研究課題
1. 全国自治体を対象とした調査全国の保健所設置市における保健所、保健センター、本庁281箇所の母子保健課宛に調査票を郵送した。調査項目は、(1)自治体の属性(所在エリア、地方公共団体の区分)、(2)COVID-19流行前後における産後女性を対象とした保健事業の実施状況(情報提供の状況・方法・形態、事業担当者の職種、事業対象者および条件設定、実施回数、開催日時の設定、開催実績、参加人数、情報提供)である。24市から回答が得られた(回収率8.2%)。 産後の母親を対象とした支援としては母親の健康支援6件、健康支援+職場復帰支援14件であり、感染症流行による増減はなかった。情報提供の方法は、流行前は資料や動画配信等による情報提供が31件、対面講座等が7件であり、感染症流行により動画配信やオンライン利用による支援が増加していた。情報提供の対象は、希望者が最も多かった。特に職場復帰支援は個別相談での対応であることが示された。支援の形態としては、行政の直営事業8件、子育て支援事業担当等との共催3件、民間共催2件、業務委託2件など多様であり、感染症流行前後の差はほとんどなかった。本調査の限界として回収率が極端に低かったこと、母子保健担当部署以外の意見が充分に反映されていない可能性があると考えられた。2. 産後女性向け教育コンテンツの作成産後女性向けの教育コンテンツとして、感染症流行下でも受講しやすいe-learning教材を開発した。①母親の健康支援プログラム(母乳栄養支援、身体回復、生活リズムを整える)、②育児支援サービスの(行政が提供するサービス、保育園入園に向けた準備等)の情報提供プログラム、③職場復帰支援のノウハウ(育休、夫婦のワークライフバランス、ストレス対処、ライフキャリア)プログラムの3分野の構成とした。動画や共通のイラストを組み入れた修正版を作成中である。
3: やや遅れている
1. 全国の自治体を対象とした調査保健所設置市の母子保健担当者宛に調査票を郵送したが、回収率が極端に低く充分な解析が困難であった。各自治体において感染症流行対策が優先され、本調査への対応に手が回らなかった可能性がある。そのため、ヒアリングを追加して、実態をより具体的に把握する必要がある。2. 教育コンテンツの作成COVID-19流行に伴い、多くの自治体で集合形式の健康教室が中止となった。そのため、本研究の当初に計画していた対面式の教育プログラムから、オンラインで受講可能なe-learning教材の開発に変更し、さらに介入方法等について協力自治体と計画変更のための調整に時間を要した。
1. ヒアリング調査産後の母親向けの健康支援や職場復帰支援を実施している自治体またはNPO法人を通じて、本研究の介入対象となる母親へのインタビュー調査を実施する。COVID-19流行下で出産・子育てする母親が求める、職場復帰に向けた行政および産科医療機関からの支援を明らかにして、必要な要素は教材の内容に追加する。2. 作成したe-learning教材の効果検証自治体および子育て支援を行うNPO法人の協力を得て、育児休職中の母親を対象に、開発したe-learning教材を提供し、その効果を検証する。母親の健康支援・育児支援プログラム提供群と、復帰支援プログラムを付加群について、1年後の職場復帰率や復帰後のストレスに差があるかを検討する。
COVID-19流行下のため研究全体が遅延しており、研究期間を1年延長することとした。また、情報収集や研究成果発表を予定していた学会がすべてオンライン実施となり、学会参加にかかる費用が削減されている。2022年度は、自治体や子育て支援に関係するNPO法人等の協力を得て2021年度に作成した教育プログラムの効果検証(介入研究)を実施する。現在、未使用の研究費は新たに追加するインタビュー調査、E-learning教材のブラッシュアップ(動画やイラストの追加)と介入研究前後のアンケート調査・解析、用いる予定である。
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