研究実績の概要 |
小児がん経験者9名、小児がん経験者の母親5名に対し質的研究を行った。インタビューで得たデータは、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチで分析した。 小児がん経験者の治療後のライフステージで教育機関で生じる問題として、復学後の勉強の遅れを実感し、友達関係・教員と新しい関係を構築していかなければいけなかったことである。復学後、入院前の自分に戻ることは困難なことを理解し、母親は子どもの状況を見守っていた。小児がん経験者の中には、復学し、新たに体験することは、入院時には全く想定していなかった出来事が存在した。入院時に予測可能なことであったら、情報提供が必要だったと話す研究対象者もいた。また、将来出現する可能性がある晩期合併症や二次がんに対して、発症時の年齢が低いほど、自分の疾患を理解していないことが多く、成人後自分の疾患の情報を知りたくても、どこでその情報を聞けばよいのかわからない状況を訴えた。以上の結果から、外来で実施する長期フォローアップにおいて、学校生活で生じる精神的な問題に対するケアや、特に幼少期に小児がんを発症した子どもに対する情報提供が必要である。疾患の情報提供は、疾患の説明・治療・今後予測される問題を経時的に提供し、自分の健康を保持できるような環境作りが課題である。 また、支援プログラムは、一方的な指導になることがないように、段階的で継続的なチェックが可能なものであり、医療者が共有して確認できる必要がある。最終年ではアルゴリズムを用い、小学校入学後の1,2年時より疾患の理解をわかり易く説明し、中学生卒業時には自分の疾患を理解後、将来の健康を保持可能な情報提供とセルフケアを実践するプログラムを開発した。また、医療者が見えづらい教育機関との課題は、今後小児がん経験者、その母親、教員、養護教員のデータを収集し、教育機関に対する支援プログラムの開発も早急に行う必要がある。
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