研究実績の概要 |
本研究の目的は、1.つわり症状の経時的変化と自律神経活動との関係を明らかにすること、2.経穴刺激前後の自律神経活動の変化からつわり症状に効果がある経穴を特定すること、3.特定した経穴刺激の効果を明らかにすることである。 目的1は2019~2020年度に実施した。その結果、悪阻指数やRINVR(Rhodes Index of Nausea, Vomiting, and Retching)は妊娠10週頃に最も高い値を示し、それ以降は緩やかに減少したがその変化には個体差が大きかった。心拍変動解析値は妊娠7~10週から妊娠11~14週にかけてhigh frequency (HF)パワーが下降し、Low frequency)/HF比は有意に上昇した。つわりが強い妊婦ほど精神健康度が低く、副交感神経活動が亢進していた。目的2については、経穴刺激の有無による自律神経活動の経時的変化の差に有意差はなく、つわりに効果のある経穴は特定できなかった。 2022年度は、目的3の経穴刺激の効果を明らかにする介入研究を実施した。つわりに対して妊婦がセルフケアとして行う経穴指圧の効果を明らかにする目的でWebによる介入研究を行った。1回目の調査は78人、2回目(1回目の4週間後)の調査は45人のデータが得られた。45人のうち経穴指圧を実施した妊婦は29人であった。分析の結果、実施群(29人)と非実施群(16人)間で、悪阻指数、RINVR、GHQ28(General Health Questionnaire-28)の1回目と2回目の点数の差に有意差はなかった。妊婦の評価は実施群の20人(69.0%)は「少し効果があった」、9人(31.0%)は「あまりなかった」と回答した。使用した経穴は内関、足三里、太衝の3か所であり、内関単独より足三里や太衝を追加した方が効果があると考えられた。
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