研究実績の概要 |
本研究は,分娩期に起こりやすいリスク場面を仮想環境として提供し,リアルにその状態を体験でき,さらにこの教材(VR教材)を用いたリスクの察知と行動・思考を評価することである。 本年度は, リスク2場面の分娩室を再現し,視線 検出機能付きHMDHTC Vive pro eyeを用いてシステムを構築し,仮想環境教材を作成し実験を実施した。具体的には,視線の逐次計測と視線の注視によって必要な行動がポップアップ表示され,コントローラーで対応を選択できるような掲示システムをVR内に表示できるようにし,VR教材を作成した。VR終了後,危険箇所を選択した・選択しなかった理由やVRの欠損点や意見を問うた。さらに実験内容や方法・関心度について,質問紙を実施するという流れとした。2場面は, 分娩室に入室している胎児心音低下の場面と産後1時間の弛緩出血の場面とした。人物配置の位置,画面全体から見えるリスクなど考慮して,映像化した際にわかりやすい事例とするためにこの場面を選択した。 現在はデータ収集中である。実験データは,助産師12名および助産師学生14名からデータが得られている。データ収集の経過途中であるが,VR教材の評価として,イメージ感や没入感,奥行感の評価は概ね高く,自身が実際に分娩室に存在しているかのように違和感なく感じられる場面であると高評価を得ている。また画像がリアルである,音の効果もあるという評価と,実際にVR内の物品を動かしたり触れられた方がリアル感が増す,対応に対して物品や対象が反応してくれるとさらに良い,他の場面ももっとあると良い等の意見がみられ,今後の課題としての示唆を得ることができている。 またVR装着による直接的な生体への影響として, VR酔いがあげられたが,実験後の症状として眠気以外の症状はみられなかった。 今後はさらにデータ収集を進め分析を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は,VRを装着して実験する。COVID-19の感染拡大が続き,対面調整の困難や移動の妨げ,実験場所の出入りの制限,実験のタイミングがあわない,など実験環境の調整が遅延の原因となった。また,予定していた海外での学会参加も見送らざるを得ず,学会参加はほとんど遠隔となり情報収集も制限された。さらに研究者の職場環境として人員の不足により,研究活動の時間を確保することができず,エフォートが予定通りいかなかったため研究活動が遅延した。
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