研究課題
本研究では,大学生と地域在住高齢者が対話を通じて,空き家を活用した世代間交流が継続的に実践できるプログラムの構築を目指し,2019年度から5年間の取り組みを行った.2019年度には基礎的資料を得る為,拠点となる3地区の住民と大学生の社会貢献・世代間交流及び地区内の「空き家」に対する意識の実態を明確にする目的で質問紙調査を実施し,他世代との交流は少ない傾向にあり,空き家に対しては防犯上や災害時の心配に加え地域の衰退という心配を感じていたことから,住民と学生が対話の機会を多く持ち,地域の特性を踏まえて交流内容や時期を検討しながら協働で事業を推進する重要性が示唆された.調査結果を踏まえ,2020年度以降は大学生と地域住民の対話を通じて,地域にある空き家を活用した世代間交流プログラムを構築していく予定であったが,2019年度末に発生した新型コロナウィルス感染症により人との交流は大きく制限することを余儀なくされた.拠点空き家の維持・管理を行いながら,3拠点の中で住民の協力が得られた1地区に絞って,2020年度には大学生が感じている地区の魅力と地域課題を発表すると共に,空き家の活用について,参加者全員(学生及び地域住民)が自由にディスカッションする機会を設けた.2021年度には高齢者と学生がアイディアを出し合いながら協働で空き家改修を企画し,2022年度にはクラウドファンディングで資金を調達してリノベーションを完成させるとともに,地域の特産物を返礼品とし高齢者の知恵と熟達した技能を伝授していただいきながら製作する過程で深い交流ができた.最終の2023年度には,市教育委員会と協働して空き家を拠点にした文化財ツアー等を実施したり,空き家の内覧と意見交換のイベントを開催し高齢者と交流する機会を設けた.5年間の取組みを通して,空き家を活用した継続的な世代間交流の基盤は構築できたと考える.