研究課題/領域番号 |
19K11123
|
研究機関 | 聖路加国際大学 |
研究代表者 |
中野 敏明 聖路加国際大学, 聖路加国際病院, 医長 (70306588)
|
研究分担者 |
滝本 博明 北里大学, 理学部, 講師 (00253534)
藤村 響男 北里大学, 医学部, 講師 (50209087)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | オゾン水 / 手指衛生 / 殺菌 / 手湿疹 |
研究実績の概要 |
医療従事者は院内感染予防のため,頻回の石鹸による手洗いとアルコール製剤による手指消毒が必要である.一方で,頻回の手指衛生で皮膚バリア機能が低下するため,職業性手湿疹の罹患率は高い.そこで職業性手湿疹の罹患率を下げるために,衛生的かつ皮膚バリア機能の保持可能なオゾン水による手指衛生法を実施調査することになった.本研究,「看護師の皮膚バリア機能の維持と手指衛生の両立に向けたモバイル型オゾン水の応用」では,1)ハンディ型オゾン水の殺菌効果を試験管内で評価し,2)使用方法を手型培地で検討し,3)院内看護師の職業性手湿疹の罹患率を調査して,ハンディ型オゾン水の有用性を検討することを目的としている. 2020年度は,北里大学において,ハンディ型オゾン水噴霧装置のオゾン水の細菌・真菌(カンジダおよび白癬菌)に対する抗菌活性を評価するIn vitro実験を施行した.抗ウイルス活性に関しては,猫カリシウイルスやインフルエンザウイルスなどを対象とした実験を施行した。聖路加国際病院では,院内看護師に対し,殺菌に必要なオゾン水噴霧器の有効な噴霧回数について,手形培地で施行した。噴霧直後に手形培地の培養を行うと,石鹸水手洗いと同様に余分な水分が手掌に付着しているため,タオルで拭き取ることにした。ただしペーパータオルでの拭き取りでは,ペーパータオルの常在菌であるグラム陽性桿菌のBacillus sp.がかなり増殖することが分かったので,その影響をなるべく抑えるために,滅菌タオルを使って拭き取る方法を選択することになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
各種細菌の抗菌活性実験は,2019年から2020年度にかけて概ね予想通りの結果を得ているが,新型コロナウイルスへの対応で,一定期間の実験の自粛や研究施設への立ち入りが制限されたため,進捗状況はやや遅れている.現在までに,黄色ブドウ球菌,大腸菌と緑膿菌に対する抗菌活性が,流水型のオゾン水と同等の抗菌活性があることが証明されている.聖路加国際病院では,2020年度に看護師の手湿疹とスキンバリアの評価および手形培地によるオゾン水殺菌能の評価研究を始める予定であったが,コロナ禍の新型コロナ患者の全病院的な対応で,急な院内看護師のシフト変更や,医療スタッフの長期欠勤による影響もあり,医師の勤務体系に支障がでたため,院内の臨床研究は予定より遅れた。
|
今後の研究の推進方策 |
院内看護師の手湿疹の罹患率とスキンバリアの評価の臨床試験は,2021年4月下旬より既に開始し,現在進行中である。また手形培地を用いたオゾン水噴霧による細菌殺菌能の臨床試験も5月より開始したところである。今年度中には上記の院内臨床研究は終了できるものと考えている。大学でIn vitroでの細菌,真菌,ウイルスなどに対する抗菌活性についても,今年度中に最終評価する予定である。 オゾン水噴霧器の有用性が得られれば,病棟などで臨床応用して,手湿疹の罹患率の改善やスキンバリアへの影響などを評価する予定であったが,まだ新型コロナウイルスに対する抗ウイルス活性については未知であるため,今後新たに新型コロナウイルスに対する抗ウイルス活性の基礎研究を追加する必要があり,現時点では臨床応用については慎重に対応する必要があると考えている。今後,各種抗菌・抗ウイルス活性などの基礎研究の結果がよければ,新型コロナウイルスに対する抗ウイルス活性についても検討する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はコロナ禍の影響で手形培地の研究が後ろ倒しになっため,手形培地の購入数が減少したため,次年度に手形培地の購入とデータ収集や学会発表などで引き続き使用する。
|