研究課題/領域番号 |
19K11123
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研究機関 | 聖路加国際大学 |
研究代表者 |
中野 敏明 聖路加国際大学, 聖路加国際病院, 医長 (70306588)
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研究分担者 |
滝本 博明 北里大学, 理学部, 講師 (00253534)
藤村 響男 北里大学, 医学部, 講師 (50209087)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | オゾン水 / 抗菌活性 / 抗ウイルス活性 / 手湿疹 / 看護師 |
研究実績の概要 |
職業性手湿疹の罹患率を下げるために、衛生的かつ皮膚バリア機能の保持可能なオゾン水を用いた手指衛生法の臨床研究を実施した。 今年度は引き続き北里大学においてハンディ型オゾン水による抗ウィルス活性を評価するIn vitro実験を施行した。実験には、インフルエンザウイルスA/PR/8/34 (H1N1)とノロウイルスの代替ウイルスであるネコカリシウイルスF9株(FCV)を用いた。ウイルス液(0.1 ml)にオゾン水または滅菌精製水を9.9 ml加え混合し,30秒間静置し,細胞変性効果 cytopathic effect(CPE)による方法を用いて,ウイルスの50%組織培養感染 50% tissue culture infective dose (TCID50) 算定によりウイルス感染価を測定し,各ウイルス量を定量した。その結果、両ウィルス共に30秒間のオゾン水処理でウイルス価が減少した。 また、聖路加国際病院では,院内看護師の手湿疹の罹患率と重症度の評価,アンケート調査及びスキンバリアの評価を行った。その結果,2021年の看護師の手湿疹罹患率は55.6%(75/135例)であった。2017→2020→2021年の当院看護師の手湿疹罹患率は27.1→40.3→55.6%で,重症度である平均HECSIスコアも15.1→14.3→30.7と上昇した。保湿剤の使用率は59.3→89.5→85.9%と約9割に達し,使用頻度も就職前の1日平均2回から5回に増えたが,平均HECSIスコアは上昇傾向を示し,限界も見え始めていることが分かった。スキンバリア機能の指標であるTEWL測定では,健常被験者の無疹部と手湿疹群の無疹部及び手湿疹群の皮疹部は28.0→42.0→48.7g/m2/hで,段階的にスキンバリア機能の低下を認めた。以上から手背無疹部のTEWL測定が,手湿疹の予測と対策に役立つと考えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
In vitroでのハンディ型オゾン水による抗菌活性および抗ウイルス活性の検討は、ほぼ終了し、現在真菌および臨床分離菌に対する抗菌活性を検討中である。聖路加国際病院の院内看護師の手湿疹罹患率と重症度評価,スキンバリア評価およびアンケート調査は終了した。また既存の石鹸手洗いとアルコール手指消毒に加え,ハンディ型オゾン水による抗菌活性について,院内看護師による各手指衛生前後の細菌培養を,手形培地を用いて行っている。現在のところハンディ型オゾン水発生器による手指消毒では,各看護師の手洗い方法で結果にバラツキがでているため,流水型オゾン水発生器を新たに設置し,噴霧型との併用による評価を検討しているところである。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は,臨床分離真菌株に対する抗真菌活性を,聖路加国際病院で分離したカンジダ臨床株を用いてIn vitro実験で検討する予定である。各種抗菌・真菌・ウイルス活性については,結果が全て出次第,今後学会にて発表予定である。また聖路加国際病院では,ハンディ型オゾン水発生器と流水型オゾン水発生器の使い勝手や効果の違いを比較評価し,ハンディ型オゾン水発生器のメリットとデメリットを明らかにした上で、併用による有用性を評価して臨床試験を終了する予定である。院内看護師の手湿疹の罹患率と重症度およびその要因の解析については,結果を第121回日本皮膚科学会総会(2022.6.2-5)で発表予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由:実験室における基礎研究に関しては、換気や密を避ける等実験室の環境整備とコロナ下に於ける運用法の決定に時間を要したこと。また病院における臨床研究では、コロナ禍において被験者となる看護師の多忙により,基礎および臨床研究期間が延長し,次年度使用額が生じている。 使用計画:現在続いている臨床研究の細菌検査で用いている手形培地を購入する予定であることと,今後,得られた結果をまとめて学会発表や論文作成などに使用する予定である。
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