研究課題/領域番号 |
19K11125
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研究機関 | 聖隷クリストファー大学 |
研究代表者 |
酒井 昌子 聖隷クリストファー大学, 看護学部, 教授 (60236982)
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研究分担者 |
長江 弘子 東京女子医科大学, 看護学部, 教授 (10265770)
片山 陽子 香川県立保健医療大学, 保健医療学部, 教授 (30403778)
森 一恵 関西国際大学, 保健医療学部, 教授 (10210113)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 高齢心不全患者 / 訪問看護 / アドバンスケアプランニング / 意思決定支援 / 訪問看護判断 |
研究実績の概要 |
高齢心不全療養者の患者体験における先行研究によると、主に米国のものであるが、終末期にある心不全患者のQOLは辛く困難なものであった。特に症状が出やすいのは女性、併存疾患が4つ以上あること、NYHA分類Ⅲ~Ⅳ度(重度)であり、抑うつのある人であった。心不全症状の患者生活への影響については、息切れや疲労が最も多い症状であり、これが日常生活に強く影響していたことが明らかになった。また、心不全患者が抱える最大の問題として社会的孤立があり、症状により自宅に閉じ込められていると感じ精神衛生上の問題になっていることがわかった。さらに、生前最後の6ヶ月に限定した終末期患者の全米調査SUPPORT研究によると、心不全患者の41%が死亡直前の3日間に痛みを生じていたが、しかし、痛みに対して医師や看護師が適切に処置できたデータはなかった。心不全の増悪を繰り返す疾患特徴と高齢患者の老化も重なり、患者自身が自分の状態を理解できないことが多く、心不全患者の終末期のあり方や「望ましい死(good death)」に関する意思決定支援やコミュニケーションの改善が重要と指摘されている。我が国においても患者中心の「望ましい死」に関する意思決定支援やACP(アドバンスケアプランニング)支援が進められているところであるが、この「望ましい死」モデルはがん患者に対する終末期ケアの基盤として策定されたものであるため、心不全を罹患する、主として高齢者への適応はできないという報告もある。これらの文献検討から、我が国の訪問看護を使用している高齢心不全患者の療養状況、自己の療養生活の認識やセルフマネジメント状況、我々の先行研究によって認められたアドバンスケアプランニングへの準備性(尺度)について調査を行うこと及び高齢心不全患者の意思決定支援に関われる訪問看護師の支援の実態を明らかにすることの必要を再認識し研究計画を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ禍により当初、研究計画した在宅療養をしている高齢心不全患者と訪問看護師を対象とした研究方法の実施が難しい状況が続いていたため、引き続き文献検討を進めた。コロナ感染対応も落ちついたため、延期した年度においてであるが、見直した研究方法による調査実施し、結果分析を進める。
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今後の研究の推進方策 |
延期年度であるが、我が国の訪問看護を利用している高齢心不全患者と意思決定支援に関わる訪問看護師対象とした質問紙調査を行う。 調査は、高齢心不全患者の訪問看護を展開している訪問看護ステーションに対して、1つは訪問看護を利用している高齢心不全患者を対象とした調査を行う。調査目的は、高齢心不全患者が望む生活や終末期ケアを明らかにすることである。調査内容は、患者自身の病状認識、セルフマネジメント状況、これまでアドバンスケアプラニング(生活や終末期ケアの希望)の認識と実施の有無、アドバンスケアプランニングの準備性尺度による患者のACPの準備状況の把握を行う。2つには、研究目的である高齢心不全患者の終末期ケアの判断と支援を明らかにすることであり、そのために、高齢心不全患者の訪問看護経験のある訪問看護師を対象とした調査とする。調査内容は、訪問看護師の心不全患者とその家族への終末期ケアに関する意思決定支援の実態(判断時期、判断理由、実施内容)を把握する。これら2つの調査結果を分析と統合することで、高齢心不全患者の望む生活の実態とそれに関する訪問看護師の判断と支援の実態を明らかする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度は、コロナ禍により研究対象とする訪問看護師および訪問看護を利用している高齢心不全療養者への調査受け入れが難しかったことまた研究分担者との共同研究活動についても遠隔でおこなったことから、調査に関わる物品費、旅費、人件費、その他の費目の支出が少なく、1,710,974円の残金が生じた。 2023年度は再研究計画に沿って調査の実施、分析を実行し、旅費、人件費、その他において残額を利用する予定である。
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