研究課題/領域番号 |
19K11132
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研究機関 | 兵庫大学 |
研究代表者 |
石井 久仁子 兵庫大学, 看護学部, 講師 (70735886)
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研究分担者 |
中井 寿雄 金沢医科大学, 看護学部, 准教授 (10708986)
鷺野 貴子 姫路大学, 看護学部, 助教 (20759336)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 独居高齢者 / 在宅 / 意思決定支援 |
研究実績の概要 |
急速な高齢化とともに高齢者の単独世帯、老老世帯が増加している。独居や身寄りのない高齢者は、日常の見守りをはじめ公的制度では対応できない生活課題について不安や困難を生じやすく、在宅生活の継続が難しい。コミュニティが希薄化する中で、現状のままでは独居高齢者が在宅生活継続の危機に直面するごとに、意思確認が不十分なままで生活の方向性を決定せざるを得なくなる。そのため独居高齢者の生活支援を担う介護支援専門員や地域包括支援センターの職員はストレスや不全感、自責感などを抱えたまま業務を遂行することになる。このように、独居高齢者のQOLの向上だけでなく援助者にとっても、高齢者自身の意思決定支援はきわめて重要な課題である。本研究では、これまでこのような事例に対応してきた介護支援専門員や地域包括支援センター職員、訪問看護師に、「独居高齢者が在宅生活の中断を余儀なくされた状況」と「独居高齢者の意思決定支援」に関する質問調査を実施して実態を把握する。また、在宅生活の継続が難しくなる前に、独居高齢者本人と身近な支援者である介護支援専門員や地域包括支援センターの職員が早い段階から話し合い、準備しておくことで、主体的な意思決定につながる思われる項目を抽出する。当初は、在宅高齢者の支援をしている専門職を対象にグループインタビューを行う予定であったが、コロナ感染症の発生及び拡大により、インタビューの実施を延期した。しかし、その後も断続的に感染者数が拡大し、実施の見通しが立てられないため、研究方法を質問調査のみに変更して実施することとなった。現在は調査の実施に向けて倫理申請中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究は、当初の計画では昨年度で終了の予定であったが、研究初年度に発生したコロナ感染症により、当初、第一段階として計画していたインタビュー調査の実施が困難となった。その後も断続的な感染拡大の波と、対人接触の制限が継続していることから、研究協力者の感染対策と業務量の増加等の現状を踏まえ、インタビュー調査は今後も実施困難であると判断し、研究方法の変更に至った。コロナ感染症の見通しは難しく、国の対策の方向性も定まりにくかったため、研究計画変更の判断に至るまでに長い時間を要した。昨年は、質問紙調査のみで本来の研究目的を達成するために、調査対象や具体的な方法、調査項目等の詳細についての再検討を行った。本研究を一般化するためには、回答者数を増やす必要があるため、調査対象を2県から全国に拡大した。さらに、研究協力者の負担軽減と回収率を増やすことを目的に、郵送による質問紙調査からスマホ等を用いて直接回答を入力する調査方法に変更した。現在は倫理審査に申請中である。
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今後の研究の推進方策 |
47都道府県を対象とした地域層別無作為抽出によって全国の地域包括支援センター、居宅介護支援事業所、訪問看護ステーション等を各1,000件抽出し、調査票にアクセスするためのQRコードを記載した依頼状を送付する。研究協力に同意した場合にはQRコードにアクセスして質問票に入力し、送信していただく。コロナ感染拡大以降、対人援助専門職は通常業務に加えて感染対策等で多忙を極めているため、インターネット回線を使用した回答方法を用いて、スマホからでも回答できるようにした。しかし、研究協力を依頼する介護支援専門員や訪問看護師は年齢層が比較的高い者が多いため、インターネットによる調査について抵抗感が生じないかという課題が残る。そのため、スマホ等からのアクセスや回答が間便にできるように工夫し、わかりやすい説明分を添付する。集計後は、独居高齢者が在宅生活の中断を余儀なくされた状況、および、独居高齢者の意思決定支援に関する実態を分析し、在宅生活の継続が難しくなる前に、独居高齢者本人と、身近な支援者である介護支援専門員や地域包括支援センターの職員が早い段階から話し合って準備することで主体的な意思決定につながると思われる項目を抽出する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)コロナ感染症の見通しが難しく、研究方法の変更を決定するまでに時間がかかった。昨年度は、研究方法の変更に伴う調査対象や調査項目等の再検討に留まり、調査の実施までは至らなかったため、印刷費、郵送費等の経費が生じなかった。 (使用計画)全国調査を実施するため、研究依頼書やQRコード表の印刷および全国調査のための郵送費、層化無作為抽出のための業者委託費、データ分析のためのソフトの購入等の支出を予定している。また、データ分析や考察を行う際のミーティングのための旅費、および、研究成果を学術雑誌等に公表するための費用として使用する。
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