高齢化に伴い急性期病院では、65歳以上の高齢患者が大半を占め、なかでも75歳以上の割合が年々増加している。急性期病院での治療に伴う尿道カテーテル留置管理や、おむつや尿取りパッドの使用をきっかけに、退院後も施設や在宅療養において、排泄介助を必要とする要介護高齢者は多い。そこで本研究の目的は、①急性期病院において、高齢患者を対象とした下部尿路症状のスクリーニング方法を確立すること、②急性期病院で排尿自立支援を受けた高齢患者が、その後も必要な排尿ケアを継続して受けられるよう、地域の包括的な排尿自立支援・サービス提供体制(地域包括的排尿自立支援システム)を構築することである。 ①急性期病院の高齢患者に対する下部尿路症状のスクリーニングについて、これまで高齢患者には、残尿などの尿排出障害が加齢により急増するが、積極的に発見して、必要な検査・治療につなげる取り組みはなかった。重症化すると尿排出障害は、尿路感染症や膀胱過伸展につながる恐れがあり、慢性的に残尿が多い状態を予測する変数が分かれば、残尿測定が必要な高齢患者を抽出し、優先的に介入できると考えた。そこで、高齢患者の尿排出障害の保有率と、尿排出障害に関連する要因を明らかにすることとした。研究方法は、2018-2019年1急性期病院に入院した高齢患者614名を対象に、看護師による携帯型超音波残尿測定器を用いた残尿測定と、主要下部尿路症状質問票を用いた入院前の下部尿路症状のアセスメントを実施した。その結果、高齢患者の尿排出障害の保有率は、100mL以上の残尿を1回以上認めた者が107名(17.4%)、100mL以上の残尿を2回以上認めた者が50名(8.1%)であり、年齢(75歳以上)、残尿感、脳神経および循環器系疾患が関連した。これらの研究成果を地域のコンチネンスケアに関わる有識者と共有し、②地域包括的排尿自立支援システムを構築した。
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