本研究は,臨床・介護現場で良く使用されるアクティビティについて,認知レベルに対応した適切なアダプテーションが,視覚的に捉えやすく,簡便に可能なアクティビティケア・マトリクスを開発することを目的としている. 具体的な研究目的は次の通りである.研究1)アクティビティケア・マトリクス試作版の内的妥当性を認知症ケアの経験を有する保健福祉専門職を対象としてデルファイ法により検討し完成版を開発する.研究2)アクティビティケア・マトリクス完成版を認知症高齢者に実際に使用し,主観的QOL,眼球運動,ケアスタッフの満足度といった側面から臨床的・基礎的な検討を行う. 研究1については,2019年度において,臨床現場で認知症に良く使用されるアクティビティに対して,認知レベルに対応したアクティビティケア・マトリクス完成版を開発し,研究課題を達成した. 研究2については,2020年度にアクティビティケア・マトリクス完成版の臨床的・基礎的な予備的検討を行い,2021年度には,介護老人保健施設,デイケアを利用する認知症高齢者を対象として効果を検証した.その結果,従来の介入よりも,本研究課題において開発したアクティビティケア・マトリクス完成版に基づいたプログラムの方が,主観的QOLが高いことが示された.アクティビティなどに積極的に携わることやポジティブ感情の存在は,高齢者や認知症の重要なQOL要素である.開発した認知レベルと対応したアクティビティケア・マトリクスのQOLの側面から臨床的効果が確認された.
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