研究課題/領域番号 |
19K11161
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
坂田 由美子 筑波大学, 医学医療系, 名誉教授 (30347372)
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研究分担者 |
高田 ゆり子 筑波大学, 医学医療系(名誉教授), 名誉教授 (90336660)
大宮 朋子 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (90589607)
出口 奈緒子 筑波大学, 医学医療系, 助教 (20824204)
菅原 直美 常磐大学, 看護学部, 講師 (50786126)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 発達障害 / 乳幼児健康診査 / 保健師 |
研究実績の概要 |
乳幼児健康診査における発達障害児スクリーニングの実態と、発達障害児支援における他者・他機関との連携において保健師が感じる困難感と職業性ストレスとの関連を明らかにすることを目的に質問紙調査を行った。1742全市区町村の母子保健担当保健師対象に、郵送法による悉皆調査を2019年10月15日~11月11日に実施した。 回収された567(有効回答率32.5%)の調査票を分析した。その結果、発達障害児スクリーニング実施率は1.6歳児健診91.7%、3歳児健診91.0%で1.6歳児健診と3歳児健診の両方での実施率は90.7%であった。保健師が発達障害に気づく項目(重複回答)は、1.6歳児健診、3歳児健診とも『言語発達の遅れ』が最も多かった。発達障害と判定される割合は1.6歳児健診も3歳児健診ともに1~10%、健診後のカンファレンスは97%の市町村で実施、フォローアップとしては1.6歳児健診では『次の健康診査まで様子観察』81.0%、3歳児健診では『所内発達相談の紹介』80.1%が多かった。早期支援実施率は1.6歳児74.3%、3歳児77.1%、継続支援実施率は1.6歳児84.8%、 3歳児84.0%で、多くの市区町村で発達障害のスクリーニングを実施しフォローアップにつなげていた。しかし早期支援、継続支援を実施していない市区町村があることも明らかになった。 発達障害児支援における他職種・他機関との連携での困難感と保健師の職業性ストレスの関連では、スタッフ間の情報共有の困難感が高い者は対人関係ストレスが高く、上司のサポートが低かった。また地域の関係機関との連携の困難感が高い者は対人関係ストレスが高く、養育者との連携の困難感が高い者は職場環境によるストレスが高かった。発達障害児支援での他者・他機関との連携における困難感が高い保健師は職業性ストレスが高いという結果が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は保健師が活用できる発達障害児の養育者の子育て支援ガイドラインの開発を目的としている。1年目の2019年度は、全国の市町村で実施されている乳幼児健康診査における発達障害児のスクリーニングの実態を把握することを目的として郵送法による悉皆調査を実施した。その結果、乳幼児健康診査における発達障害児のスクリーニングと支援の状況が把握できた。今後は障害特性に応じた適切な早期支援のための情報をさらに収集していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、発達障害児の養育者を対象に、望ましい支援開始時期、養育者不安解消に必要な支援、不安の内容、子どもの発 達支援に必要な支援等について調査を行う予定である。調査対象は地域で結成されている親の会等に依頼し、自閉症スペクトラム(ASD)、学習障害(LD),注意欠陥多動性障害(ADHD)の 養育者各 5名程度に依頼する予定である。さらに支援を実施している市町村の保健師5名程度に対しても2019年度の質問紙調査では把握できなかった支援内容について面接調査を実施する予定である。 2021年度は保健師が活用できる発達障害児の養育者の子育て支援のためのガイドラインを作成する。作成手順は、 ①2019年度、2020年度の調査結果から導きだされた支援内容を中心に、養育者が発達 障害の特性を強みとして捉え、養育者の不安を解消して子育てに向き合えるような支援ができる保健師のためのガイドライン案を作成する。 ②上記①で作成したガイドライン案の妥当性を検証するために、デルファイ法で保健師10 名と養育者10名に内容の確認を依頼し検証を行い、最終的なガイドラインを作成する。また研究成果の学会発表を行い研究の総括をする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度からの繰越金は郵送法による質問紙調査の回収率が予定より低かった為に残額が生じた。また2020年度は当初予定の発達障害児の養育者対象への調査に加えて、市町村の母子保健担当の保健師対象に面接調査を実施予定のため、その経費の前倒し請求を行い調査の円滑な推進をはかる予定である。
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