本研究では通所介護・短期入所生活介護を利用する要支援・要介護高齢者に歯科検診を導入し、検診結果を基に歯科・看護師・口腔ケア関係者が個々の対象者に合わせた口腔ケアプランを作成し、口腔ケアの実施・指導を行った。口腔ケア介入前後の口腔内細菌数と口腔衛生状況、口腔ケア実施状況の変化を評価したところ、舌背の一般細菌数は有意に減少し、O'Learyらのプラークコントロールレコード(PCR)と地域歯周疾患処置必要度指数(CIPITN)およびOHAT日本語版(OHAT-J)の有意な改善がみられ、口腔ケアの実施状況にも改善を認めた。歯科と看護の連携は、要支援・要介護高齢者の肺炎予防や口腔衛生状況および口腔ケアの実施状況の改善につながる可能性が示唆された。 高齢になるに従い肺炎による死亡数が増えており、要支援・要介護高齢者の肺炎と誤嚥性肺炎は今後も継続的に予防すべき疾患である。高齢者の肺炎の原因の70%以上が誤嚥性肺炎であると言われており、口腔ケアは、口腔衛生状況を改善し、誤嚥性肺炎を予防する方法の一つである。在宅での生活を基盤とした通所介護・短期入所生活介護を利用している高齢者への口腔状況や口腔ケアの実態調査はあるが、歯科・看護の連携した実践に関する研究はない。通所介護・短期入所生活介護における口腔ケアの実態を知り、その個々の現状に対して支援する必要があり、単に知るだけではなく歯科医師により専門的なプライマリーな診断を受け支援に結び付ける必要がある。 今回、歯科と連携した口腔ケアを通所介護・短期入所生活介護施設において実施したことで、口腔衛生状況および口腔ケアの実施状況に改善が見られた。通所介護・短期入所生活介護を利用している高齢者に歯科と連携した口腔ケアに関する指導・ケアが入ることは、在宅要介護高齢者の誤嚥性肺炎を予防し在宅での生活を続けられるために意義のあることであると考える。
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