研究課題/領域番号 |
19K11187
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研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
樋口 まち子 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 国立看護大学校 教員 (40335584)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 高齢者の全人的健康 |
研究実績の概要 |
近年、世界的に高齢化が進み、人類は長命という目標を達成しつつある。一方、先進工業国を中心に、自らが納得する人生の終焉をできない高齢者が増加している。社会の近代化に伴い、都市部人口の増加と地方の過疎化が進み、多縁の煩わしさからの解放も果たしたが、若年からの心身および経済的な自立の準備性がないために、フレイルや孤独感、経済的貧困などによって、健康寿命を縮める結果を招いている。そこで、本研究は世界的な人口の高齢化と高齢者間の経済格差の拡大する中で、高齢者が自己尊厳を保ちながら個としての独自の人生を全うできる全人的健康に向けた持続可能な地域社会の構築のために有効な支援プログラムを開発することを目的とする。 本研究は、人口の高齢化を達成した国民総所得が低い途上国において、限定的な経済環境にあっても自分が納得する質の高い人生を終えるための条件や要因を明らかにする。国民の25%が1日2ドルの以下の経済状態にありながら、平均余命78歳を達成し、生活習慣病が増加するなど先進工業国と類似した健康問題に直面している途上国の高齢者の生活状況や高齢者に対する行政及び民間の支援状況を把握し、高齢者が人間として尊厳を確保しつつ自分らしい人生を全うするために適切な支援政策策定への提言をする。それによって、世界的規模で超高齢化を迎えるライフシフト時代に対応するための個別性を重視した政策づくりに繋がる新規性に富んだ成果が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は研究対象地域において、関係省庁の担当官にインタビューおよび政府刊行物を入手し、高齢者に対する地域支援政策の現状を把握した。 急速な人口の高齢化の中で、2000年に、高齢者の人権保護条例が施行され、2006年には、国家政策として健康、社会福祉、経済的支援に焦点を当て、社会的エンパワーメント福祉省および保健省が政策実施の責務を担っている。政策の実施は国家政策が州、県、市町村に下ろされて、ほぼ国全体に均一に展開されているが、事業の運営・実施には地域住民のピアサポートを通したエンパワーメントを期待していることから、地域の潜在力によって、地域ごとに高齢者が受ける支援には格差が生じている。また、保健分野では、地域に配属されている専門職が母子保健や感染症予防を担当する助産師や衛生管理士であるため、高齢者の健康の維持増進には十分に対応できていないことが予測される。
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今後の研究の推進方策 |
今年度実施したイフォーマントのインタビュー及び公文書等から、地域住民は疾病の予防や治療に近代医療と伝統医療を実践しており、寺院が地域行事の中心的役割を担い、宗教が生活観/人生観の軸となっていることが明確になった。さらに、仏教に由来する幸福感や死生観が深く根ざしていることが予測される。特に、国民の70%が上座部仏教を信仰していることから、高齢者の成育過程の上座部仏教寺院の役割、教育課程における仏教の位置づけを調査し、分析する必要がある。また、COVID-19の感染拡大状況によっては、研究内容や研究方法を中心として研究の推進計画を、適時、見直す必要性がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、購入を予定していた文房具は、既存のものを再利用して使用できたため、購入が不必要となった。当該繰越額は次年度の文房具代として使用する予定である。
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