研究課題/領域番号 |
19K11190
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
須藤 紀子 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (40280755)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 災害対策 / 災害時給食マニュアル / 給食施設 / 高齢者施設 / 備蓄 |
研究実績の概要 |
熊本地震や令和2年7月豪雨、新型コロナウイルス感染拡大といった経験をもつ熊本県内の介護保険施設(272施設)の給食担当責任者を対象に郵送調査を実施した。災害時にも平常時と変わらない給食提供が必要な高齢者施設において非常事態対策が整っているのか調べ、給食施設の災害時マニュアルに必要な事柄を把握することを目的とした。 96施設から回答が得られた(回収率35.3 %)。ほぼ全ての施設で食品の備蓄が行われていたほか(95施設)、災害対応マニュアルも多くの施設で整備されており(81施設)、被災経験の有無にかかわらず災害への備えが進められていた。一方、災害用トイレを備蓄している施設や入所者に災害用トイレを使用させたことがある施設は少なかったほか(2施設)、食事提供訓練を実施したことがない施設が半数以上であるなど(59施設)、給食施設の災害対策の現状における課題もみられた。備蓄やマニュアルを整備していても、実際に災害発生時に活用できるものでなければならない。平常時から食事提供訓練を実施することで、現在備蓄している食品は災害時と同じ状況でも施設入所者にとって満足できるものであるのか評価することができるほか、混乱する災害時でもマニュアルを活用するためには、平常時から訓練を行いマニュアルの見直しや改善をしていくことが欠かせない。 本研究により、食品備蓄の現状などを通じて高齢者施設の給食担当責任者の非常事態対策への意識の高さがみられる一方で、非常事態を想定した上で備蓄・マニュアルを整備することの重要性をさらに普及していく必要があることが分かった。今後に向けては、災害時と同じ状況を想定した訓練を定期的に実施できるような給食施設向けの教材の開発や、混乱する災害時にもすぐに確認できるマニュアルや媒体の整備を進めることで、日本の非常事態対策がさらに強化されることが期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
質問紙調査の研究倫理審査の承認が下りるまでに時間を要してしまった。
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今後の研究の推進方策 |
質問紙調査の結果をもとに非常時の給食マニュアルとアクションカードを作成する。熊本地震もしくは令和2年7月豪雨で被災した高齢者施設を対象に、熊本地震の際の給食対応について、追加で質問するとともに、作成した給食マニュアルとアクションカードについてのフィードバックをもらう。また、給食提供訓練への参加を募る。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に予定していた災害時のモデル献立・備蓄品リスト・給食マニュアルの作成ができなかったため、次年度使用額が生じた。 2021年度は、感染症の流行といった健康危機管理時にも使用できる非常時のモデル献立・備蓄品リストを収載した給食マニュアルに加えて、アクションカードも作成する。作成した成果物は2020年度に実施した質問紙調査回答者のうち、被災経験のある施設に送付し、フィードバックを受けるとともに、食事提供・実食訓練への参加希望を募る予定である。
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