本研究の目的は、保健師が虐待予防に必要な専門的支援技術、特に援助関係づくりに着目した研修プログラム(以下、プログラム)を開発し、評価検証を行うことである。プログラムの理論的根拠をBanduraの社会的認知理論とし、母子保健経験2~10年の保健師を対象に準実験研究を行った。介入の前後に測定したアウトカム項目は、保健師の行動能力や援助内容(49項目)、自己効力感や援助関係づくりの評価(14項目)他である。全ての研修を受講、調査に協力した介入群13人と対照群18人を分析対象とした。結果、保健師の行動能力や援助内容のうち13項目(26.9%)が、自己効力感や援助関係の評価5項目(35.7%)が有意に増加した。経験年数等の交絡因子を調整しても、保健師の行動能力や援助内容の10項目(20.4%)、自己効力感や援助関係づくりの評価が3項目(21.4%)で介入群が有意に向上した。プログラムは、母親との援助関係形成の初期における保健師と母親の援助関係づくりを進展させ、虐待予防に寄与することが示唆されたが、課題の量や研修時間の負担感などの課題が残された。さらに、研究期間中に発生したCOVID-19パンデミックに伴い、プログラムをオンライン版に変更して実施し、令和5年度に分析を行った。全ての研修を受講、調査に協力した13名のうち保健師の行動能力や援助内容が21項目(42.9%)、自己効力感や援助関係の評価が10項目(71.4%)有意に増加した。結果から、オンライン版保健師研修プログラムにおいても援助に必要な行動能力や自己効力感の向上が確認され、有効性が示唆された。しかし、基本的な支援技術の理解は深まったものの母親に対する共感的な感情が有意に上昇しなかった。援助関係形成には、母親に対する共感性が重要であるがオンラインでは限界があると考えられ、検討が必要である。
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