研究実績の概要 |
高齢者の誤嚥予防のための『笑顔活用朗読モデル(笑活モデル)』を開発するために、昨年度は地域在住高齢者(脳血管障害および摂食嚥下障害がない方)13名を対象に、クロスオーバー試験デザインで調査した。【昔語り(30分間;個人対話)】と【朗読(被験者自身の昔語りを朗読用に作成)】の2つの介入による気分と嚥下機能の変化、表情筋群の強度と嚥下機能との関連を検証した。 各介入前後には①嚥下機能測定(反復唾液嚥下テスト3回目積算時間(以下RSST)、舌圧、オーラルディアドコキネシス)②心理測定(二次元気分調査:TDMS-ST)、介入中はカメラの動画撮影による表情筋強度測定(FACS:Facial Action Coding System)と【昔語り】のICレコーダ録音による発話量(単音節カウント)測定を実施した。作成された【朗読】も発話量をカウントした。 【昔語り】と【朗読】の介入は嚥下機能に影響を与えず、【昔語り】は介入後有意に活性度と安定度が上昇した(p=0.003、p=0.002)。 またRSSTと表情筋群の強度との関連は、【昔語り】において男性はAU2の間に高い負の相関(r=-.914,p=004)、女性はAU5(r=-.92,p=.009)、AU7(r=-.943,p=.005、AU9(r=-.913,p=.011)、AU12(r=-.828,p=.042)、AU24(r=-.91,p=.012)の間に高い負の相関が認められた。一方【朗読】において男性はAU10(r=-.901,p=.006)、AU15(r=-.894,p=.007)、AU24(r=-.875,p=.001)、AU26(r=-.841,p=.018)の間に高い負の相関が認められたが、女性には相関が認められなかった。 以上より、高齢者の誤嚥予防のための女性の朗読モデルには、口の大きな開閉の実施が一つの要件となる。
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