研究課題
【目的】アルツハイマー型認知症(AD)が重度化すると運動障害が現れ、転倒リスクが高まる。重度化する前にその人にとってより安定する起立方法を探索し、習慣化することを目指した。老健施設に入所し起立に見守りを要するAD高齢者を対象に、座位から起立方法を試し、バランスについて検討した。【方法】シングルケースデザイン(N of 1試験)。対象者2名(A氏,B氏)に対し、5種の起立方法のパワー・スピード・重心の軌跡長 (zaRitz BM-220,TANITA社)を測定し、主観的な立ち上がりやすさを聴取した。起立方法は次の通りで、いずれも安定したやや浅めの端座位(膝・足関節70度屈曲)から起立した:①通常通りの起立 ②マットレスの縁に手を添えて起立 ③前方100㎝の床面の目印を見つつ膝に手を添えて起立 ④前方設置の可動式手すりを掴み起立 ⑤左右いずれか設置の可動式手すりを掴み起立)。各起立方法をランダムな順番で6回行い、対象者ごとに起立条件別の平均値/中央値を比較した。SPSS Statistics Ver27を用いた。【倫理的配慮】所属機関研究倫理委員会の承認を受けて行った(22-09)。対象者の認知機能に合わせ、都度平易な言葉を用いて説明し、表情や言動から説明の理解と意思を汲み取った。また対象者の縁者からも同意を得た。【結果】A氏,B氏共に起立方法③で失敗が認められた。A氏はパワーの項目で、B氏は起立開始から完了までの時間、パワーおよびスピードの項目で起立方法④が有意に好値であった。A氏,B氏共に起立方法④を最も立ち上がりやすいと評価した。【考察】AD高齢者にとって習慣化している起立方法が最良と限らない可能性が伺えた。また重心を前傾することに重きをおいた起立方法③はAD高齢者にとって安定しないことが考えられ、一方で前方手すりを把持することは起立動作への集中が促された可能性がある。
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京都橘大学研究紀要
巻: 49 ページ: 327-336