研究実績の概要 |
本研究は、無作為化比較試験によって、高齢脳卒中患者とその家族の価値観に基づいて開発した意思決定ガイド(Decision aid; DA)の効果について、意思決定の葛藤と参加の視点から検証した。 研究参加者は介入群と対照群に無作為に割り付け、入院時と退院時に質問紙調査を実施した。介入期間は、入院から退院までの2ヶ月間行い、介入群にはDA、対照群にはパンフレットを提供した。主要評価項目は意思決定の葛藤であり、意思決定葛藤尺度(Decisional Conflict Scale; DCS)を用いて評価した。副次的評価項目である意思決定への参加については、参加役割は意思決定嗜好尺度(Control Preference Scale; CPS)、参加率は10段階のVisual Analog Scaleを用いて評価した。意思決定の葛藤と参加率の群間差を検討するために独立t検定、参加役割はχ2独立検定を実施した。さらに、事後のサブグループ分析を実施した。 99名の参加者(介入群51名、対照群48名)に対し、Full Analysis Set(FAS)を行った。意思決定の葛藤において [t (99) = 0.69, p = 0.49, d = 0.14] 、意思決定における参加役割において [χ2 (5) = 3.65, p = 0.46]であり、有意な群間差は認められなかった。しかし、参加率においては有意な群間差が認められた [t (99) = 2.24, p = 0.03, d = 0.45]。DAは特に、一人暮らしで退院先を入院時に決めかねている参加者に対して、不確実性を減らし、参加率を高める傾向が認められた。 退院先選択時の意思決定は、地域性の影響を大きく受けるため、今後DAの標準化に向けて、ビックデータの解析による地域格差の評価、AIを用いたWeb版の開発が望まれる。
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