研究課題/領域番号 |
19K11253
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研究機関 | 神戸市看護大学 |
研究代表者 |
宇多 みどり 神戸市看護大学, 看護学部, 講師 (90552795)
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研究分担者 |
大瓦 直子 神戸市看護大学, 看護学部, 助教 (30836854)
片倉 直子 神戸市看護大学, 看護学部, 教授 (60400818)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 在宅看護実践力 / 看護基礎教育 / 主体的学習方法 / アクティブ・ラーニング / 新卒訪問看護師 / 訪問看護 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、看護基礎教育において在宅看護実践力強化に向けた主体的学習方法の確立を目指すものである。主体的学習の確立により、批判的思考力や社会人基礎力の育成となり、看護基礎教育での在宅看護実践力を強化し、新卒看護師による訪問看護の人材育成をねらうものである。 初年度の2019年度は、アクティブ・ラーニングの視点で考える在宅看護教育方法の検討を行うための準備を以下の通り行った。 1.まず、地域・在宅ケアに携わる新卒訪問看護師を育むための現状と課題、教育機関の役割について広く知見を得るために、学術集会(第4回神戸看護学会,2019.10.開催)での交流会(予備調査)を開催した。過去に新卒訪問看護師としての就業経験者や臨床現場で新卒看護師の受入れ育成されている訪問看護ステーションの管理者等3名の語りから看護活動の現状と課題は、【看護活動の場の広がりへの対応】や【土地勘の習得】が重要であり、【同期の切磋琢磨がない】という職場環境の課題が聞かれた。在宅医療を携わる医師や外来看護師等の交流会参加者(13名)からは、【人生観や価値観に添える力】を取得する必要があり、教育者へは、【学習への積極的な動機付け】や学生が感じている【「世界」の気づき】と【引き出す関わり】が重要という意見が出された。今後、学術誌に発表予定である。 2.アクティブ・ラーニングの実践文献や資料について現在、看護系のみならず他分野からも、幅広く収集している。また、本研究における「アクティブ・ラーニング」の定義を明確に定めると共に、教育目的、対象者、学科目、期間および時間、学習方法、教材、結果、評価について整理分析中にある。 3.今後は1.2より、主体的学習の教育効果の評価項目の抽出し、所属研究機関での倫理審査委員会での承認を受けて、質問紙調査を実施していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度の研究実施計画では、アクティブ・ラーニングの視点で在宅看護教育方法の検討を行うために、①アクティブ・ラーニングの実践文献から授業設計の示唆を得る(文献レビュー)、②看護学部の学生の現在の批判的思考力や社会的人基礎力の傾向を知り、それらを基礎資料として、授業設計(教育方法や教材開発)に向けて検討する予定であった。しかし、本研究の前調査である「訪問看護ステーション管理者が新卒看護師に望む在宅看護実践力と採用意向との関連」(宇多みどり他、日本在宅ケア学会(22-2)、P.72-81、2019)の研究結果から、訪問看護ステーション管理者が、将来的に新卒看護師を採用するにあたり望むことは、高いレベルの医療の知識や技術を備えていることよりも、【基本姿勢と態度】や【状態の変化に気づき、適切に報告・連絡・相談ができる】ことを重視し、新卒看護師が【自己の課題を認識】し、【自律的に学習ができる】ことを望んでいるという結果を得た。このことから、研究開始前に結果を広く関係者に公表し新卒訪問看護師と育成する管理者等から意見聴取する必要性を重視し、交流会(第4回神戸看護学会学術集会、2019.10)で予備調査を実施した。結果、地域・在宅ケアに携わる新卒訪問看護師を育む現状から、新卒訪問看護師の社会的人基礎力の傾向を知り基礎資料を得ることができたものの予定通りの研究スケジュールは踏めなかった。 アクティブ・ラーニングの文献レビューにおいては、保健医療福祉系のみならず他の学科目及び各国から、幅広く収集しており時間を要している。 以上から、看護学部の学生の現在の批判的思考力や社会的人基礎力の傾向を明確にし、授業設計(教育方法や教材開発)に向けて検討するまでに至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策について、以下のように実施する。 ①予備調査としての「地域・在宅ケアに携わる新卒訪問看護師を育むための課題と教育機関の役割」と整理中であるアクティブ・ラーニング文献(教育目的、対象者、学科目、期間および時間、学習方法、教材、結果、評価)をもとに、自律的学習の教育的効果に関する内容(批判的思考力や社会的人基礎力等)やグループワークなどの学習方法に関する認識等の内容を抽出し、質問紙調査票を作成する。②質問紙調査票を在宅看護学の科目開講前(学部2年生後期95名)に実施し、項目ごとに単純集計する。③学生の傾向に配慮した授業設計(教育方法や教材開発)に向けて検討するとともに、授業担当教員は、アクティブ・ラーニング実践(臨機応変な学習方法)にむけて研修や看護教育セミナー等に参加し、研鑽する。④③の検討内容の一部を実施し学部3年生、前期終了時に学習効果を評価する。⑤新型コロナウィルス感染症対策として、オンライン等を活用しても実践可能な演習を検討する。⑥質問紙調査については、研究機関での倫理審査委員会の承認を得る。 以上の③~⑤について同時進行できるよう計画し、研究が推進できるよう工夫する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度の研究到達目標「アクティブ・ラーニングの視点から在宅看護教育方法の検討」に至らなかったため、自律的学習の教育効果に関する事前の質問紙調査費用、教材開発に関する費用(オンライン活用含む)、授業担当教員の教育方法習得に向けての研修や学会参加(2019年度新型コロナウィルス感染症のパンデミックにより中止された)するための費用として、次年度使用額を請求する。 研究計画に基づき、以下のように使用する。 ①看護学部の学生の現在の主体性や批判的思考力、社会人基礎力等の傾向を明確にするための質問紙調査に関する費用とする。②教材開発に関する費用として、視覚(DVDまたは訪問看護の臨床現場のビデオ撮影)教材を作成する。また、模擬療養者とその介護者を設定したシナリオ作成や高機能シミュレーターの活用時に必要な物品購入に充てる。教材開発においては、臨地実習指導者(研究協力者)の協力が不可欠であることから謝礼や交通費に充てる。③授業担当教員の教育方法習得に向けて、国内のシミュレーションセンターへの研修や米国のシミュレーション看護教育研修施設(ジョンズホプキンス大学)への参加費とする。なお、新型コロナウィルス感染症のパンデミックを鑑み方法を検討する。④その他、一部実施した授業においては、授業評価のためのデータ入力費用、授業協力者への謝礼、報告書作成、成果報告のための学会参加費等に充てる。
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