研究課題/領域番号 |
19K11256
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研究機関 | 高崎健康福祉大学 |
研究代表者 |
赤堀 八重子 高崎健康福祉大学, 保健医療学部, 講師 (30700124)
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研究分担者 |
倉林 しのぶ 高崎健康福祉大学, 保健医療学部, 教授 (20389753)
斉藤 基 群馬県立県民健康科学大学, 看護学部, 教授 (30258884)
武居 明美 高崎健康福祉大学, 保健医療学部, 助教 (70431715)
坪井 りえ 群馬県立県民健康科学大学, 看護学部, 講師 (70526483)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 特定保健指導 / 生活習慣病予防 / 尺度開発 / 特定保健指導該当者 / 未利用の動機 / 利用促進ガイドライン |
研究実績の概要 |
2019年度は、研究の第1段階である特定保健指導の利用勧奨の際に活用する尺度「特定保健指導該当者を対象とした未利用の動機測定尺度」を開発した。 質問項目は、研究者の先行研究などから作成し、2市1町1村の特定保健指導該当者3,738人に対して質問紙調査を実施した。項目分析及び探索的因子分析の結果、【理想的な健康よりも優先される価値観】【生活習慣を変えることに対する無益感】【保健指導に対する否定的な感情】【自身の健康の判断に対する自負心】の4因子18項目が抽出された。信頼性の検討では、全体のクロンバックα係数は.904であった。構成概念妥当性は、確認的因子分析及び既知グループ法で検討した。確認的因子分析によるモデル適合度は、GFI=.936、AGFI=.915、CFI=.941、RMSEA=.059であり、比較的当てはまりのよいモデルであると判断され、既知グループ法では有意な関連がみられた。また、基準関連妥当性においても、有意な負の相関が認められた。 本尺度は、質問項目数が18項目と少なく、特定健康診査を受診する地域住民が短時間で簡便に最小限の負担で回答できるものである。尺度の活用可能性としては、尺度総合得点による活用、下位尺度得点による活用の2点が考えられる。本尺度は、特定保健指導の未利用という行動の決定に最も影響を与えている動機を把握することができるため、1人ひとりの動機の特徴に合わせた方法で勧奨及び保健指導を効果的に実施することができる。 特定保健指導の利用率は、多くの市町村において目標値に到達しておらず、その対策は、各市町村に委ねられており都道府県や市町村の格差が著しい状況にある。本尺度は、市町村で活用することが可能であり、特定保健指導の利用率向上のための有効な対策になると考える。 第2段階では開発した尺度を活用した利用促進ガイドラインを開発する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究の進捗状況として、当初の計画では、2019年度においては尺度開発とあわせ、協力市町村の確保及び下位尺度の特徴別の利用勧奨プログラムを検討する予定であった。しかし、尺度の開発に遅れが生じたため、協力市町村の確保及び下位尺度の特徴別の利用勧奨プログラムの作成に着手できていない状況ある。現在は、尺度開発に関する研究論文を学会誌投稿用にまとめているところである。 今後は、尺度開発に関する論文を学会誌へ投稿するとともに、下位尺度の特徴別の利用勧奨プログラムの支援内容について十分に検討を行っていく。また、協力市町村の確保を進めていく予定である。利用勧奨プログラムの完成は2020年3月頃、利用促進ガイドラインに基づいた介入の実施は、2021年度を予定している。以上のように、当初の計画と比較し、研究の遂行が遅れている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
2021年3月までに、開発した尺度に基づき下位尺度の特徴による介入方法の検討を行い、利用勧奨プログラムを作成する予定である。下位尺度の特徴別の利用勧奨プログラムの枠組みは、トランスセオレティカルモデルを適用することとする。現在は、下位尺度の特徴にあわせた具体的な支援方法を検討している。また、利用勧奨プログラムの作成にあたっては、公衆衛生看護に携わる保健所保健師、市町村保健師、公衆衛生看護学領域の教員等をメンバーとし、専門家会議を実施する。開発した「特定保健指導該当者を対象とした未利用の動機測定尺度」と利用勧奨プログラムを基に利用促進ガイドラインを作成する。 2021~2022年度は利用促進ガイドラインの実施を行う予定である。実施方法は、研究協力フィールドの市町村において、特定健診の受診券とともに特定健診対象者へ「特定保健指導該当者を対象とした未利用の動機測定尺度」を郵送し、問診票とともに回収する。次に「特定保健指導該当者を対象とした未利用の動機測定尺度」得点結果により、特定保健指導該当者を利用行動の動機の特徴別に分類する。利用勧奨プログラムに基づき、下位尺度の特徴に合わせた支援方法を用いて特定保健指導該当者への介入を行う。 有効性は、プロセス評価(質的検証)と、アウトカム評価(量的検証)で検証する。具体的には、プロセス評価(質的検証)は、特定保健指導担当者に対して半構造化面接によるインタビュー用いてデータを収集し、質的帰納的方法を用いた分析を行い検証する。アウトカム評価(量的検証)は、特定保健指導該当者を利用促進ガイドラインの実施群(介入群)と従来の支援方法の比較群の2群に分類した2群間の比較を行い有効性の検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の遂行に遅れが生じたため、市町村の確保及び協力市町村との打ち合わせの際に生じる旅費や、学会参加費・旅費等のために、計上していた予算を使用しなかった。2020年度は、市町村の確保・打合せを行うため、その際に使用する予定である。また、当初の予定通り、今年度は、利用勧奨のためのリーフレット等の作成、尺度(質問紙)の印刷に助成金を使用していく。
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