研究課題/領域番号 |
19K11262
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研究機関 | 岐阜医療科学大学 |
研究代表者 |
道林 千賀子 岐阜医療科学大学, 看護学部, 准教授 (20733801)
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研究分担者 |
中村 正和 公益社団法人地域医療振興協会(地域医療研究所), ヘルスプロモーション研究センター, センター長 (00450924)
表 志津子 金沢大学, 保健学系, 教授 (10320904)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | たばこ対策 / アドボカシー / 教育プログラム / コンピテンシー / 保健師 / 自治体 |
研究実績の概要 |
本研究は、自治体のたばこ対策の促進に向けて、保健師のアドボカシー実践能力の獲得・向上に焦点化したコンピテンシー基盤型教育プログラムを開発することを目的とする。研究者らによる先行研究(Michibayashi et al., 2019)の知見を活用し、インストラクショナルデザインの枠組みに基づき、効果的かつ効率的な教育プログラムを開発する。 2年目である2020年度は、コロナ禍における教育プログラムの実施に向けて、その内容や実施方法、スケジュール等を含む計画全体の見直しを行った。新型コロナウイルス感染症対策に追われる自治体の状況を踏まえ、当初予定である2020年度の介入研究実施は困難であると判断し、今後の感染拡大の状況を踏まえて介入研究の実施時期や介入フィールドを調整することとした。また、2021年度の介入研究に向けて、教育プログラムの再検討や教材開発を進めた。介入方法は対面でなく遠隔による実施を主軸とすることに変更し、教育プログラム内容を再検討した。 2020年度の後期(2021年1月)には、教育プログラムの検討に役立てるため第9回日本公衆衛生看護学会学術集会においてWEBによるワークショップを実施した。ケース教材(案)等を用いた意見交換を行うとともに、ケース教材の現場での実用可能性に関して参加者から意見聴取を行った。ワークショップは事前のオンデマンド動画配信(たばこ対策に関する保健師のコンピテンシーについての35分程度の動画)の視聴に加え、Zoomによるワークショップ(ケース教材を題材としたディスカッションを含む約60分の設定)とした。コロナ禍に加え天候による影響から(豪雪)、ワークショップ当日の参加者は少なかったが、教育プログラムの主要なコンテンツとなるケース教材(案)を用いてWEBでの意見交換を試行し、参加者の反応やケース教材(案)に関する意見を聴取することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度は、国内外の文献レビューに基づきたばこ対策に関するアドボカシーの概念について調べ、次いで、学習者である自治体保健師の学習ニーズについて既存データを用いて質的・量的に分析した。また、教育評価のための尺度の検討およびアドボカシーに焦点化した教育プログラム設計やケースメソッド教材の作成に着手した。 2年目である2020年度は、当初計画では教育プログラム(案)に基づき介入研究による検証を実施する予定であったが、コロナ禍にあることから当初計画を変更して研究を進めた。具体的には、ケースメソッド教材の試案について、on-lineを用いて実践者等への意見聴取を行うこととした。また、教育プログラム全体についても、対面での集合研修ではない方法を模索し、再検討を開始した。以上のように、変更後の計画に沿って進めることはできたが、当初計画に照らすとやや遅れていることから「やや遅れている」と評価した。 3年目の最終年度である2021年度も、現時点において新型コロナウイルス感染症第4波の感染拡大による影響が大きいことから、前期の介入研究の実施は難しい状況である。介入研究の実施については、今後の感染拡大の状況やコロナ対策の中心を担う自治体の状況を鑑みながら進めていく必要がある。実施可能な時期や対象フィールドの選定などを含めて、コロナ禍での実現可能性について検討を重ね、調整を継続する。教育プログラム内容を含む介入内容は、2020年度のワークショップで収集した意見を踏まえて再検討し、新たなケース教材や配信用動画等も試作する。 なお、当該年度における介入研究の実施目途が立たない場合は、研究期間延長についても具体的に検討する。
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今後の研究の推進方策 |
現在の研究の進行状況にやや遅れが生じているため、当初計画を一部見直し、2021年度は以下の計画のとおり進める。 学習者である自治体の保健師の学習ニーズを踏まえ、コロナ禍でも実現可能なWEB主体の教育プログラムに変更し、アドボカシーに焦点化した教育プログラムの目標設定および内容の再検討を重ねる。学習形態は、ケースメソッド教授法を応用した半日または1日単位のWEB研修とする。内容は、講義(たばこ対策のアドボカシーに関する基礎的知識とコンピテンシーの理解)、グループ討議、全体討議、まとめで構成する。ケース教材は、たばこ対策の領域別(禁煙支援、受動喫煙防止、喫煙防止、推進体制)、自治体種別毎に複数作成し、ディスカッション設問、ティーチングノートを作成する。たばこ対策の日々の実践をリフレクションできるワークシートも検討する。プログラム内容やケース教材は、先進自治体の保健師や研究者等のエキスパートを対象に、メールやon-lineで意見聴取を行い洗練する。 加えて、2021年度後期予定の教育プログラムの実施(介入)について、介入フィールドの選定や実施時期の調整を行う。研究対象者はたばこ対策を担う自治体保健師(都道府県、市町村)約30名を目標とし、1群介入前後比較の非ランダム化研究によって効果検証を行う。調査・解析は、介入前のベースライン、介入直後、3~6か月後の追跡(追跡時期、期間は要検討)を行い、介入前後の変化を統計解析する。測定項目は、4段階教育評価モデルを参考に、研修の満足度、たばこ対策に関するコンピテンシーやアドボカシーの知識や理解、たばこ対策に関するコンピテンシー評価尺度-保健師用(論文投稿準備中)、実践での活用などとする。 新型コロナウイルス感染症感染拡大の影響により研究が予定とおり進まない事態が生じた場合は、必要に応じて研究計画を変更し、研究期間の延長についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額として242,973円の当該助成金が生じた理由は、研究計画の変更に伴い介入研究に関する支出がなかったこと、また研究者間の打ち合わせは遠隔(WEB会議、メールなど)による実施としたことから、これらに関する費用(旅費やその他委託料、消耗品費など)が未消化となったためである。 次年度使用額として計上する助成金は、2021年度の研究実施に伴う費用の一部として活用する。
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