本研究では、高齢者に多い非がん疾患として心不全を対象に、診断時からの緩和ケア導入へ向けて、看護師を対象とした研修プログラムを実施し、その受入および効果を明らかにすることを目的とした。循環器病棟に勤務する看護師を対象に、介入群には90分からなるZoomによるオンライン研修を実施した。研修プログラムの内容は心不全緩和ケアの概念、心不全の病態・治療と経過・予後、症状マネジメント、意思決定支援、多職種連携で、テキストを用いて説明を行った。対照群には閲覧用に同様のテキストを送付した。両群に介入前、介入直後、1か月後に、開発者の許諾を得て心不全用に一部改変した緩和ケアに関する医療者の知識・困難感・実践尺度、研修プログラムの受入等に関する質問紙調査を実施した。 対象者は介入群22名、対照群17名の計39名で、全体の平均年齢は39.95歳、看護師経験年数平均16.94年、循環器病棟経験年数平均7.11年であった。緩和ケアに関する院内研修受講経験は56.4%、院外研修受講経験は30.8%、心不全患者の看取り経験は82.1%に認められた。 心不全の研修プログラムの効果について、緩和ケアに関する知識については、介入群では介入前に比較して介入直後に得点が上昇し、対照群においてもテキスト閲覧直後に同様の傾向が認められた。緩和ケアに関する実践では、両群共に介入前に比較して1か月後に得点が上昇していた。 研修プログラムの受入について研修直後における10段階評価では、今後の実践に役立つ内容であった8.32、研修時間はちょうどよかった7.91、研修内容はわかりやすかった8.09、研修内容の難易度はちょうどよかった7.68、心不全の緩和ケアに関する基本的な知識を得る機会になった8.41、研修は今後の実践の自信に繋がった7.00等であり、研修プログラムは概ね受入れられたと考えられる。
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