研究課題/領域番号 |
19K11269
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
大津 美香 弘前大学, 保健学研究科, 准教授 (10382384)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 認知症 / 心不全 / 多職種連携 / マニュアル / 生活管理 / 疾病管理 |
研究実績の概要 |
2020年度は看護職員と介護職員の連携・協働により、認知症高齢者の疾病・生活管理を行ううえでの課題を検討するため、介護保険施設の介護職員を対象として実態調査を行った。その結果、急変時対応の困難感と不安において中等度の正の相関がみられ、困難感を軽減することが不安感の軽減につながると考えられた。介護老人保健施設では、介護職員は心停止への対応に不安を抱いていることが明らかになり、医療職である看護職員が研修会を開催する等、急変時対応の技術習得の機会を設け、介護職員の不安を軽減させるための支援が必要であることが示唆された。適切な生活行動が守れない認知症高齢者の生活援助に対しても困難感が強く、対応困難感と不安に中等度から高い正の相関がみられたことから、適切な生活行動が守れない事例に対する効果的な対応方法を共有する機会を設け知識や技術を共有することで、対応に自信を持てるようにする必要性があると考えた。また、特別養護老人ホームよりも介護老人保健施設の介護職員は心疾患に関する食事・水分摂取や活動の援助に対する知識があると認識していたことから、特別養護老人ホームの看護職員は介護職員との連携・協働をより強化する必要性が示唆された。看護職員との職種間連携に関しては、直接的にも間接的にも情報共有が行われていたが、「ケアに必要な情報が看護師から介護士へ十分に共有されていない」「関わる全スタッフへの申し送り内容や指示の周知が必要」等と、職種間連携が不十分な状況にあるという意見もあった。高齢者の身体疾患の悪化予防のための日常生活管理に向けては、チームとして連携するという認識をもつことが課題であると考えられた。2020年度の研究結果を踏まえて2019年度に作成したマニュアル原案の修正を行うとともに、マニュアル内容を実践に役立てられるよう研修会を開催する等、プログラムを検討していく必要性もあると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は、研究第2段階として「マニュアル原案の内容妥当性の検討・修正案の作成」のため、認定看護師からマニュアル原案の評価を受けることを計画していた。しかし、2019年度の先行研究を基に作成したマニュアル原案には不足している内容があったことから、介護保険施設の介護職員を対象として日常生活管理の実情と課題について実態調査を行った。本調査結果をマニュアルに追加し、2021年度にはさらに、先行研究から課題となっていた認知症高齢者の心不全の症状が捉えにくいという特徴を踏まえて、症状の捉え方に関する調査や、看護職員と介護職員の有効な連携・協働のための方法を検討するための調査を実施することを検討している。このような経緯から、2020年度の計画が変更となり、予定していたマニュアルの内容妥当性の検討までには時間を要することとなった。変更後の計画は概ね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は認知症高齢者の心不全に関連して出現する主観的な症状の捉え方を検討するため、当事者及びケア提供者に調査を実施する予定である。また、認知症高齢者の心不全の日常生活管理のために有用な看護職員と介護職員の連携・協働方法を検討するため、認知症高齢者の心不全の日常生活管理のために連携・協働を意識して取り組んでいる職員に対して調査を実施し、効果的対応方法・内容をマニュアルに追加することを検討している。コロナウィルスの感染拡大の影響から、対面でのインタビュー調査は困難になると予測される。今後の動向を注視しながら、オンラインによるインタビュー調査、あるいは、郵送調査に調査方法を変更することを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
マニュアルに不足している内容を追加するため調査を実施し、内容の修正を行ったため、予定していた内容妥当性の検討のための専門家へのインタビュー調査が次年度以降に繰り越しとなった。次年度以降においても、さらに追加調査を行い、マニュアルを完成させる。今後、調査にかかる費用に加えて、分析ソフトを購入するための費用についても必要となる。これらは次年度以降に使用する予定である。
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