1.認知症高齢者の心不全の日常生活管理において、看護職員と介護職員との間に生じるコンフリクトと対処方略 介護保険施設の看護職員及び介護職員から得られた調査結果をまとめた。認知症高齢者の心不全の日常生活管理において、看護職員は介護職員に心不全の悪化の早期発見よりも情報共有や緊密な連携により心不全の悪化予防を重視することを期待していた。一方、介護職員は心不全の悪化の早期発見に責任を感じながら、その責任を果たせていないことに葛藤していた。対処方略の1つである「活動的」対処の得点が看護職員では介護職員よりも有意に高く、介護職員間では経験年数の長い群が短い群よりも有意に高いという結果であった。よって、看護職員や経験年数の長い介護職員が先導して職種間に生じたコンフリクトの内容を共有し対処することで認知症や心不全をもつ高齢者のケアの質向上につながると考えられた。 2.認知症高齢者の心不全の悪化予防に向けて看護職員と介護職員が日常生活管理を行うためのマニュアルの作成 介護保険施設の看護職員と介護職員が認知症高齢者の心不全の悪化予防に向けて日常生活管理を行うためのマニュアルを作成し、その有効性を検証した。第1段階では文献を用いてマニュアル原案を作成した。第2段階では、医療・介護の専門家による内容的妥当性の評価を得てマニュアル暫定版を完成させた。第3段階において、マニュアル暫定版は介護保険施設の職員により31名の認知症高齢者に実施された。本マニュアルを用いることにより、職員の知識の状態と実践状況が介入開始3ヵ月時に有意に改善し、また、認知症高齢者の心不全の悪化の早期発見・受診の対応に有効であった。多忙な介護現場において、非医療職である一部の介護職員では、マニュアルの通覧のみで即実践に結びつけるのは難しい状況であった。そのため、今後は短期間で学習効率が高い教材開発を検討していく必要性があると考えた。
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