研究課題/領域番号 |
19K11283
|
研究機関 | 帝京平成大学 |
研究代表者 |
富田 隆 帝京平成大学, 薬学部, 教授 (00775950)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | とろみ調整食品 / 嚥下困難者 / 嚥下障害患者 / 服薬補助製品 / 医薬品 / 至適投与法 / 薬物動態 |
研究実績の概要 |
【背景】申請者は、これまでの研究により、嚥下困難者や嚥下障害患者に汎用されているとろみ調整食品(食物や飲料に加えて混ぜ合わせるだけで、簡便に、適度なとろみを食物や飲料に付加できる粉末上の食品)で医薬品を内服した場合、薬効が減弱してしまう医療上の深刻な問題を発見した。また、申請者が実施した介護保険施設を対象としたアンケート調査によって、とろみ調整食品で医薬品を内服している嚥下困難患者の場合、薬効が十分に発現しているとは言い難い現状を明らかにした。さらに、健常成人を対象とした医薬品の経口投与試験によって、とろみ調整食品が医薬品の薬効を減弱させる事実を証明した。そのため、申請者は、とろみ調整食品による服薬で薬効が減弱してしまう問題について、学会報告及び論文発表によって、介護施設の介護者及び医療施設の医療従事者に注意を喚起している。 【目的・特色】本研究の目的は、嚥下困難者や嚥下障害患者におけるとろみ調整食品を使用した医薬品の至適内服法を確立するとともに、薬物動態に影響しない新たな服薬補助製品を開発することである。本研究の特色は、嚥下困難者や嚥下障害患者に対して実施されている薬物療法の治療成績を向上させるのみならず、副次効果として、医療費や介護費の抑制に貢献できることである。また、薬物動態に影響しない服薬補助製品の開発は、嚥下困難者及び嚥下障害患者のみならず、小児科領域の患児、抗精神病薬による薬剤性嚥下障害を発症している精神科領域の患者にも応用できることから、本研究の社会的需要、社会貢献度は高いと考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【医薬品の至適投与法】とろみ調整食品による医薬品の至適内服法を検討した結果、グアガム系の増粘多糖類が添加されたとろみ調整食品の場合、錠剤の崩壊性が著しく阻害されることを明らかにした。そのため、グアガム系とろみ調整食品は、服薬に不適切であることが判明した。一方、キサンタンガム系の増粘多糖類が添加されたとろみ調整食品の場合、とろみ調整食品を低濃度に調製し、内用薬の浸漬時間を短時間に留めれば、薬効の発現に影響しない可能性が示唆された。しかし、キサンタンガム系のとろみ調整食品を高濃度に調製した場合及び内用薬を長時間浸漬させた場合、錠剤の崩壊性が著しく阻害されることを明らかにした。そのため、高濃度のキサンタンガム系とろみ調整食品に長時間浸漬させた医薬品の場合、薬効が減弱してしまう危険性が高いことが判明した。これまでの研究により、服薬に適しているとろみ調整食品の添加剤(増粘多糖類)を明らかにしただけでなく、服薬に適しているとろみ調整食品の調製法についても検証できた。 【とろみ調整食品の調製法】とろみ調整食品を溶解するために使用する溶媒について、in vitroにおける至適溶媒を検討した結果、蛋白質を含有する溶媒及び2価イオンを高濃度で含有する溶媒の場合、錠剤の崩壊性が著しく阻害されることを明らかにした。そのため、これらの溶媒でとろみ調整食品を調製した場合、内用薬の薬効が減弱する可能性が高いことが判明した。また、これまでの研究により、とろみ調整食品の溶媒として、軟水が最適であることが検証できた。 【服薬補助製品の開発】新たな服薬補助製品の開発を目的とした検討の結果、薬物動態に影響しない増粘剤成分の候補が検出できた。現在、候補となった増粘剤を添加したとろみ調整食品の試作品について、錠剤の崩壊性や溶出性に及ぼす影響を検討するための実験を準備している段階である。
|
今後の研究の推進方策 |
とろみ調整食品による至適服薬法の確立及び新たな服薬補助製品の開発に関する本研究の結果を踏まえ、今後の研究の推進方策を検討した結果、推進方策を変更することなく、これまでの方策を継続することで、本研究の達成度の向上が期待できることが示唆された。 本研究で得られた新しい知見として、錠剤の添加剤の種類及び錠剤の製法によって、とろみ調整食品が錠剤の崩壊機序に及ぼす影響が異なる事実を明らかにした。そのため、現在、流通しているとろみ調整食品の製品及び申請者が開発しているとろみ調整食品の試作品に浸漬させた錠剤を対象とした崩壊試験を実施して、錠剤の崩壊機序の差異を詳細に検証する予定である。また、溶出試験を適用し、薬効成分の溶出機序に及ぼす影響についても検討する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、物品費として購入する予定であった医薬品の発注が遅延したためである。すでに購入する医薬品が確定していることから、次年度使用額を直ぐに使用する予定である。
|