申請者は、これまでの研究によって、嚥下困難者や嚥下障害患者に汎用されているとろみ調整食品で医薬品を内服した場合、薬効が減弱してしまう医療上の深刻な問題を発見した。そのため、本研究では、介護保険施設に入居している嚥下困難高齢患者におけるとろみ調整食品を使用した医薬品の服薬方法の実態を明らかにするとともに、嚥下困難者や嚥下障害患者に対する医薬品の至適投与法を確立した。 近年、高齢者の服薬において、経口栄養補助食品で内用薬を服用するMedication-Pass Nutrition Supplement Program(Med-Pass)が検討されている。Med-Passの場合、内用薬を服用するタイミングで経口栄養補助食品が摂取できるため、フレイル予防に結び付くことが明らかにされている。そこで、本研究では、高齢者のフレイル予防に貢献できる新たな服薬方法を検討した。経口栄養補助食品として、粘性の高いヨーグルト製品を対象とし、まず、ヨーグルト製品に混合させたファモチジン細粒の溶出試験を実施し、ヨーグルト製品はin vitroにおけるファモチジンの溶出性に大きな影響を及ぼさないことを確認した。次に、ヨーグルト製品がファモチジンの生物学的利用率に及ぼす影響を評価するために、ラットを用いた動物実験(経口投与試験)を実施した。動物実験の結果から、ヨーグルト製品はファモチジンの血中濃度に大きな影響を及ぼさないことを実証した。 上述した本研究の成果によって、嚥下困難者及び嚥下障害患者における至適投薬法の基礎が確立できたと考えられた。また、本研究で確立した投薬法は、薬剤性嚥下障害患者にも応用可能であることから、嚥下困難者及び嚥下障害患者における服薬問題を解決するためには、本研究の成果を基盤として、さらに研究を推進させる必要性が示唆された。
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