研究課題/領域番号 |
19K11284
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研究機関 | 日本医療科学大学 |
研究代表者 |
藤川 君江 日本医療科学大学, 保健医療学部, 教授 (20644298)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 一人暮らし男性高齢者 / 消滅危惧集落 / 自立生活の限界 / 生活継続 / ソーシャルサポート / 家族看護 / こころのケア |
研究実績の概要 |
消滅危惧集落の75歳以上の一人暮らし男性高齢者が生活適応上の限界を判断するまでの身体・心理・社会的状況のプロセスを明らかにし、一人暮らしが可能である経時的変化に応じた支援システムの構築を目的としている。令和元年度は、愛媛県久万高原町(12名)、福島県三島町(3名)、熊本県の多良木町(3名)及び和水町(3名)の75歳以上の一人暮らし男性高齢者に聞き取りとソーシャルサポート尺度を用いて調査を行った。聞き取り調査の内容は、生活の状況、身体的状況、家族や地域との交流についてである。消滅危惧集落で生活を継続するためには、高齢になるほど生活課題が増えると考えられるため生活課題を明らかにすることが重要と考えた。多くの高齢者は自家用車を保有し、車の運転ができるため現在の生活に不便を感じていなかったが、車が運転できなくなった場合に買い物や病院受診ができないと不安を語った。全ての高齢者は農作業や林業に関わる仕事を日課としており、一人暮らしでも家に閉じ困ることはなかった。ソーシャルサポートについては、ほとんどの高齢者が妻との死別で一人暮らしになっているため、子どもとの関係性が良く生活の見守を受けていた。しかし、子どもがいない高齢者の場合、だれがどのような支援ができるのか今後検討する必要がある。 一人暮らし男性高齢者の自宅を訪問することで、生活状況を確認しながら聞き取り調査を行うことで客観的に生活状況をアセスメントが可能であり、生活課題をより具体的に知ることができる。そして、継続して訪問することで信頼関係の構築が可能であり、生活の不安や身体面の不安などを表出する機会となる。人口の減少と同世代の減少により他者と話をする機会が少なくなっているため、訪問することで他者とはなす機会が増えるため孤立リスクが減少することが期待される。今後も継続調査を行うことが重要であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度は、消滅危惧集落の一人暮らし男性高齢者の聞き取り調査として愛媛県久万高原町12名、熊本県多良木町3名、熊本県和水町3名、福島県三島町2名を対象に聞き取り調査を行った。令和2年2月~3月にかけて宮城県網地島や北海道中頓別町の一人暮らし男性高齢者への聞き取り調査を予定していたが、コロナウイルス感染症の問題により調査に行くことができなかった。しかし、愛媛県、熊本県、福島県の一人暮らし男性高齢者の聞き取り調査を実施しているため、おおむね順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年は、コロナウイルス感染の状況を確認しながら安全が確認でき次第、聞き取り調査が実施できなかった宮城県網地島および北海道中頓別町の一人暮らし男性高齢者に聞き取り調査を行う。 また、消滅危惧集落の愛媛県久万高原町、熊本県多良木町、熊本県和水町、宮城県石巻市網地島、福島県三島町、北海道中頓別町に居住する65歳以上の住民を対象に、Zimet GD らが開発した「ソーシャル・サポート尺度」を用いて調査を実施する。居住地域や家族構成による差異を比較し居住地域の特徴を明確にする。同時に地域の支援者(地域包括支援センター職員、保健師、民生委員)に聞き取り調査を実施し、ソーシャル・サポートの現状と課題を明確にする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年2月~3月に宮城県石巻市網地島および北海道中頓別町へ聞き取り調査を予定していたが、コロナウイルス感染の発生により、調査対象者および自身の安全のため調査に行くことができなかった。令和2年5月以降はコロナウイルス感染拡大の危険性がなくなり次第、宮城県石巻市および北海道中頓別町の一人暮らし男性高齢者に聞き取り調査を実施する。 また、地域の支援者(地域包括支援センター職員、保健師、民生委員)にインタビューを実施の旅費、および聞き取り調査のための経費、謝金、人件費を予定している。事務用品、書籍の購入を予定している。さらに、一人暮らし男性高齢者が生活適応の限界を判断するプロセスに関する研究地域支援システム構築のための具体的提案に向け、学術集会への参加、書籍情報、過疎化対策を実施している市町村への情報収集のための経費と旅費を予定している。
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