人工炭酸泉が高齢者の睡眠へ及ぼす効果 【はじめに】入浴は、体温の一過性上昇から、皮膚末梢における熱放散をもたらし、入眠潜時の短縮、睡眠後半部分における睡眠効率の改善、中途覚醒時間の減少が報告される。人工炭酸泉は、より一層の皮膚血管の血流量増加が引き起こされる。【目的】これまで、健常若年者を対象に人工炭酸泉浴の睡眠促進効果を確認した。今回、高齢者に対する人工炭酸泉浴の入眠・熟眠効果を検討する。【方法】健常女性高齢者9名(年齢71.3歳)を対象に、人工炭酸泉浴(ダンレイ製業務用泡小町;平均炭酸濃度858ppm)とさら湯浴の2条件を、別日の同一時刻に行った。就寝2時間前に胸骨剣状突起 部までの半身浴(平均湯温38℃、10分間)を行い、入浴直後から起床までの体温と就寝中の脳波を測定した。また、入浴と睡眠前後に、フリッカーテスト、眠気などの主観的評価を行った。【結果】体温は、近位温、遠位温、DPG(Distal-proximal temperature gradient)のいずれも人工炭酸泉とさら湯間で有意な差は認められなかった。脳波では浅睡眠が人工炭酸泉で少ない傾向(150min vs 201min、p=0.08)であったが、深睡眠や主観的評価のいずれの項目も有意水準に満たなかった。【考察】先行研究では湯温40℃で15分間の入浴条件であった。今回、高齢者への負担を考慮して湯温を低くし入浴時間を短く設定したため、人工炭酸泉の効果が十分に発揮されなかった可能性がある。【結論】健常高齢者に対する人工炭酸泉浴の睡眠促進効果は認められなかった。
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