本研究は,視覚障害者にアクセスしやすいウェブサイトの階層構造ページ内コンテンツのアクセシビリティやユーザビリティを評価することを目的とする。 視覚障害者も晴眼者と同様に,楽に検索できた際にはストレスなく,迷った際には心的負担を感じるはずだが先行研究は見当たらない。そこで,本研究では心的負担に連動すると言われている心拍変動に着目した。評価装置としては従来の胸に直接密着させる心拍計ではなく,心拍数計測機能付きスマートウォッチを採用した。 コロナが終息しているとは言えないため視覚障害関連施設の協力を得るまでには至らず,限られた実験協力者での試行的評価の段階である。スマートウォッチは最近計測制度も上がり,腕に装着するだけで簡便である。検索時に迷ったりした場面でRR間隔が短くなる,すなわち心拍数が増加すれば,何らかの心的負担が増えると考えた。 研究代表者自ら晴眼者の一人として実験協力者となり,知人の視覚障害者の協力を得て,テキスト表示が主体で情報が検索しやすいと思われるウェブサイトや,メニュー表示や画面レイアウトが複雑なウェブサイトにおいて,目的とする情報までの検索を,(1)操作画面の遷移,(2)スクリーンリーダーの読み上げ音声,(3)実験協力者の動作,(4)心拍数,(5)検索後のNASA-TLX値,(6)検索時間を同時計測した。 その結果,長時間試行錯誤中の画面では,晴眼者・視覚障害者とも心拍数は上がり続け,検索終了後は心拍数が下がる傾向がみられ,心的負担の増減が検出できたと考える。一方,難なく検索できたときは,心拍数に大きな変化は見られなかった。なお,短時間での検索操作ではRR間隔の計測数も少ないため,瞬間的な変動がノイズになりかねないため,分単位での検出が必要であることが示唆された。今後,視覚障害関連施設などの協力を得て,ITスキルの異なる視覚障害者で実験を継続する予定である。
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