研究課題/領域番号 |
19K11302
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研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
城本 修 県立広島大学, 保健福祉学部(三原キャンパス), 教授 (00290544)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 音声疲労 / 音声疲労の自覚的評価 / Vocal Fatigue Index(VFI) |
研究実績の概要 |
本年度は,学校教員の音声障害の予防システムを構築するために,①音声疲労の自覚的評価尺度の作成を作成し,尺度の信頼性と妥当性を検証した.音声障害患者と若年・壮年健常成人において音声疲労質問紙 Vocal Fatigue Index(VFI) 日本語版の信頼性と妥当性を検証した.調査対象者は,全国 6 施設の協力を得て,音声障害患者102名(音声障害患者群)と健常成人56名(健常者群)の合計158名とし,全員に VFIを1 週間以上おいて2回実施した結果,以下の結果が得られた. ① VFIの内部一貫性を示すCronbachのα係数は,0.919であった.つまり,VFI日本語版の質問項目の高い内部一貫性が示された.② VFIの再信頼性を示す検者内信頼性係数は, 0.912であ った.これはこの尺度の再現性を示された.③ 音声障害群のVFIを構成する下位項目ファクターTとファクターPの得点と総得点は,健常者群よりも有意に高かった.つまり,音声障害があるとVFI得点は高くなることが示された. ④ VFIの音声障害患者と健常者のカットオフ値は, 21.5/76点であった.すなわち,76点中,22点を上回ると音声障害ののかの可能性が示唆される. これらのことから,試作したVFI 日本語版は十分な信頼性が示され,VFI 項目別得点と総得点の平均に音声障害患者群と健常者群の間で有意差が認められたので,音声障害の検出に有用であることが示唆された.今後は,このVFI日本語版を利用して,実際の学校教員の音声疲労について,実態調査を実施する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
学校教員の音声疲労の実態調査のための質問紙VFIについて,信頼性と妥当性を検証し,音声障害の検出の有用性を示した.今後は,実際に学校教員を対象とした検証を行い,さらに疫学的調査をしたいと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
学校教員の音声疲労の自覚的評価だけでなく,客観的評価として,実際の音声の音響分析を検討している.これまでの音響分析法は,母音のみの基本周波数と音圧のゆらぎと調波成分と雑音成分比を検討していたが,,母音のみの短い分析では疲労を検証するのは難しいと考えられるので,音読音声など長い文章でどのような変化が認められるか検証する必要がある.そのために,新しい音分析法であるケプストラム法を用いて,音声疲労との関連性を検証する予定である.そのための,録音サンプルとする音読文の検討をすでに進めている.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は,論文の英文校正や国際学会への参加などで,旅費とその他の経費を支出し.さらにレーザープリンタートナーなど消耗品に支出している.来年度からは,実際に研究協力者を募って,研究を開始するので人件費や謝金が発生する予定である.次年度使用額7239円は研究協力謝金として請求する予定である.
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