研究課題
これまで,音声疲労の主観的評価のためのVocal Fatigue Index(VFI)の日本語版を作成し,その信頼性と妥当性を検証し,主観的評価尺度として信頼性が高いことを示した.本研究では,実際に学校教員に対してVFIを用いて実態調査を行う予定であったが,新型コロナウィルスの感染状況により,実施できていない.一方.音声疲労の客観的指標として,音声のケプストラム法による音響分析を適用し,母音だけでなく,短い日本語短文の解析の信頼性などを検証し,短文に含まれる音韻の種類や文長も影響する可能性が示された.そこで,さらに音声疲労を検出しやすいと考えられる短文の種類やさらに長い文章についても検証し,論文として発表した.学校教員の実態の調査については,感染状況が好転しないと難しいので,研究者の所属する言語聴覚士養成課程の学生の実習前後における音声疲労の実態を調査することにした.言語聴覚士は,医療施設でマスクを装用した状態で,対象者と対面でコミュニケーションをとる必要があり,マスクによる音声の明瞭度低下や音圧低下など音声疲労につながる現象はすでに先行研究でも報告されている.そこで,言語聴覚士養成校の学生の臨地実習での音声疲労を検討するため,20名の学生に実習前と実習期間中および実習後の音声疲労をVFIを用いて,検討する予定である.さらに音声疲労の客観的尺度として,実際の音声についても検証されたケプストラム分析法を用いて,母音だけでなく,短文,長文の分析を検討している.
3: やや遅れている
コロナウィルス感染症の拡大により,研究対象者の確保に苦慮しており,現在は,音声疲労の主観的評価法や客観的評価法の確立に注力している.主観的評価法については,音声疲労質問紙が完成し,信頼性や音声障害患者とのカットオフ値も検討できた.しかし,学校教員を対象とした調査は実施できていない.そこで,現在は客観的指標となりうるケプストラム分析法による音響分析を適応して,音声疲労の客観的指標となりうるか検証し,音声疲労を抽出しやすい母音や課題短文,課題長文の検証を行っている.その結果,課題文については,日本語で音声疲労の抽出に適切な課題文が検証できた.しかし,これについても学校教員の音声評価をするには至っていない.
現在,音声疲労の主観的評価法と客観的評価法については,それぞれ信頼性の高い評価方法が確立できたと考えている.今後は,実際に検証するために学校教員を対象に検討が必要であるが,今後の感染状況によっては,実施が困難になることも想定される.その場合,研究者が所属している言語聴覚士養成過程の学生の臨地実習の前後での音声疲労を測定する予定である.マスク装用下で,対象患者とのコミュニケーションをとらなくてはならず,発話に苦労している.実際にアンケート調査をすると,養成課程学生の約半数が音声疲労を訴えており,音声の過度の使用が原因と考えられる.したがって,実習前後での音声疲労の実態を音声疲労質問紙で調査し,実際に実習前と後の母音や課題文音読の音声を録音してケプストラム分析法による音響分析を実施し,定量的に測定したいと考えている.
学会参加がすべてオンライン開催となり,旅費が発生しなかった.さらに研究対象者のリクルートができず,謝金も発生しなかった.
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
音声言語医学
巻: 62 ページ: 99-107
10.5112/jjlp.62.99
Journal of speech, language, and hearing research : JSLHR
巻: 64 ページ: 4754-4761
10.1044/2021_JSLHR-21-