研究課題/領域番号 |
19K11304
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
黒澤 美枝子 国際医療福祉大学, 薬学部, 教授 (30178131)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 触刺激 / 心拍数 / 心拍変動解析 / 交感神経 / 副交感神経 / 扁桃体中心核 / 超音波発声 / 陽性情動 |
研究実績の概要 |
本研究は、リハビリテーション時(種々の体性感覚刺激時)の自律機能変化に対する情動の影響とその神経機構を明らかにすることを目的としている。 本年度は、ヒトと動物(ラット)において、以下の検討をした。 ヒトでの検討:安静腹臥位のヒトの背部に触刺激(タオルを使用)を加えると、心拍数に有意な低下を認めた。その際、同時に記録したLF/HF(交感神経活動の指標)は有意に減少し、一方、HFnu(副交感神経活動の指標)は有意に増加した。これらの結果より、触刺激による心拍数低下は交感神経活動の減少並びに副交感神経活動の増加によると考えられた。さらにタオルを温めて触刺激(温+触刺激)を加えたところ、心拍数の低下並びにLF/HFの減少、HFnuの増加が延長した。また、心地よさの指標は触刺激により増加し、温+触刺激ではさらに増加した。これらの結果より、触刺激並びに温+触刺激時の心拍数低下には、自律神経の他、情動が関わることが示唆された。 動物での検討:麻酔下ラットにおいて、侵害刺激時の昇圧反応における扁桃体中心核(不安などの陰性情動の発現に関わることが知られている)の関与を検討した。その結果、扁桃体中心核神経活動の抑制により、昇圧反応が減弱することが示された。 意識下のラットにおいて、触刺激時の50-kHz超音波発声の時間経過とパターン分けをした。その結果、50-kHz超音波発声は触刺激中とその直後にのみ起こること、そして刺激中と刺激後の発声パターンは異なることが明らかになった。特に触刺激直後には、快情動の典型的指標であるTrillタイプが増加することが明らかとなった。これらの結果より、触刺激は動物においても快情動状態を起こすことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主テーマである触刺激が情動と自律機能におよぼす影響について、ヒトの心拍数を指標とする研究において一定の成果を得た。 また、麻酔下ラットにおいて、情動の発現に重要な扁桃体中心核が侵害刺激時の昇圧反応に関与することを明らかにすることができた。 さらに、動物での快情動に関しても、超音波発声パターンを詳細に分析することにより、動物が「遊び」の際に発声するパターンが刺激後に誘発されることを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト並びに動物(ラット)において実験を進める。 1.ヒトでの実験においては、ストレス下での血圧・心拍数反応における自律神経(心拍変動解析を使用)の関与と情動の影響の検討を進める。 2.扁桃体中心核の機能には左右差があるとの報告があるので、動物実験においてはまず、扁桃体中心核の循環反応におよぼす影響においても左右差があるかどうかを検討する。 3.ラットでは触刺激により快感の指標である50-kHz超音波発声が起こることが明らかなったため、50-kHz発声記録と同時に自律機能変化(心拍数)を記録し、その相関を見る。さらにその際の側坐核(快感の発現に関わることが知られている)の関与を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)薬物投与実験の確立に時間がかかり、使用を予定していた薬物の支出が少なくなった。また、論文執筆が遅れたため、英文校閲費の支出がなくなった。また、「新型肺炎ウィルス」のため、学会出張がなくなった。 (使用計画)実験追加のための消耗品費に充当する。さらに英文論文投稿を進め、英文校閲費、論文投稿費に充当する。
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